アーシュラ・K・ル・グウィン「愛がケメルを迎えしとき」(1995)

以前古本屋で発見したアーシュラ・K・ル・グウィンの短編集「世界の誕生日」を、ル・グウィンが亡くなったのをきっかけに読もうかな、という話を書いたのだが

https://hakuasin.hatenablog.com/entry/2018/01/25/050237

結局読まなかった。私の場合読もうと思ってもどうしても2、3行以上進まない事がよくあり、それはもうその時に読むべきではないのだ、と思うことにしていたのだが、今回の「ゲド戦記」最新巻発売を機に読んでみたら読み進められたので今読むべきだったのだろう。
で、全作読んでから感想を書こうと思ったのだが最初に収録されている「愛がケメルを迎えしとき」がすごかったのでまずはこの作品から。
いわゆる「ハイニッシュ・ユニバース」ものであり「闇の左手」の舞台の惑星「冬」の物語であり時系列的には「闇の左手」「冬の王」(書かれたのは「闇の左手」より前だが、時系列的にはあとの時代)に続く時代であるが、それはあまり関係ない。
この作品のすごいところは、苛烈な環境を生き抜くために遠い先祖により遺伝子操作によって両性具有となり、ケメル期という時期にのみ自動的に男女どちらかに分かれて性交を行う種族となった惑星「冬」の住民の思春期から成人への流れを描く事で、その実態を精神面、肉体面の両方から細密に生々しく描写している点なのである。
これは口さがない人から一種のポルノではないかと言われかねないレベルである。しかし勿論ル・グウィンはポルノを書くわけがない。なぜこの作品を書く必要があったのか、それはファンがそれぞれに考察するのがいいと思う。