アイザック・アシモフ「著者よ!著者よ!」

最近、アイザック・アシモフの短編集を(「われはロボット」みたいに頭に入っているものは除いて)執筆や発表の新しい順に読み返していた。
最後の最後が「アシモフ初期短編集」全3巻で、アシモフの短編集ではお馴染みの作品前後に置かれたアシモフ自身の筆になる執筆当時の事情や思い出が最も充実している短編集で、ある意味アシモフの前半生の自伝とも言っていい内容なので、アシモフ・ファンならずとも当時のSF事情を知るためにも必読ではないかと思う。
と、ここまでがいつものごとく長い前置きなのだが、その第3巻に「著者よ!著者よ!」という作品がある。内容はある小説の内容を事実だと信じた人がいたら、その小説の登場人物が実体化するというドタバタ劇である。
ここまで書くと古いSFファンならタイトルの「著者よ!著者よ!」はアルフレッド・べスターの「虎よ、虎よ!」であり、内容はフィリップ・K・ディックの「虚空の眼」を思わせる、とピンとくるのではないか。
かくいう私もそうであったが、例のアシモフの前書きによるとこの作品は1943年に執筆されたものの掲載される予定の雑誌が廃刊になり、その後21年眠っていた作品とのこと。
そして「虎よ、虎よ!」は1956年「虚空の眼」は1957年発表である。
つまりアシモフはこの2作品出版前に「著者よ!著者よ!」を書いているし、この2作品執筆時にべスターやディックは「著者よ!著者よ!」を読むことは出来なかった。この3作品にはまったく何の関連性もなく、タイトルや内容の類似はまったくの偶然という事になる!
こんなことがあるんだなあ、と古いSFファンは感慨を新たにするのであった(笑)