モンゴメリ「果樹園のセレナーデ」

モンゴメリ「果樹園のセレナーデ」
出版は「赤毛のアン」「アンの青春」の後だが、執筆自体は「赤毛のアン」の前、ということで、実質モンゴメリの処女長編にあたる、との事。
この後、むりやりアンを登場されたりしてまとめた短編集「アンの友達」を経て「アンの愛情」が出るまで数年かかっているので、出版社の新作の要請に対し、手元にあった長編を差し出したのでは?という想像はなりたつ。
長編と言いながら、長さ的には長めの中編ぐらいで、内容的にも短編で充分描けたのではないか、とも思うが「赤毛のアン」シリーズのどこかに、サイドストーリーとして挿入されても全く違和感がないであろう徹頭徹尾のモンゴメリ節は、ファンにとってはたまらない贈り物である。
原題は「果樹園のキルメニイ」で、キルメニイがヒロインの名前なのだが、スコットランドの詩からとられたという、日本人には西洋の名前としては馴染みが無いケルト系の名前である。今までさんざん、勝手にモンゴメリケルトを結び付けようとしてきたが、
http://hakuasin.hatenablog.com/entry/20110420/1303266083
ちゃんと本人もケルト的な味を出していたのだ。でも、いろいろ読んでからこれを読んでそう思うので、読む時期としては今でよかったのだろう。