ミステリー

月岡芳年(浮世絵とおせん)

松本清張の「内なる線影」(「巨人の磯」収録)を読んでいたら、主人公がヒッピー風の画家からもらった絵を「ムンクと大蘇芳年とを足して二で割ったような趣」と評しているのを見て「大蘇芳年って誰?」と思ったら、月岡芳年の事で、大蘇芳年は晩年の雅号で…

「陸行水行-別冊黒い画集2」(1964)松本清張

私が若い頃は、邪馬台国に関する本はそれこそ百花繚乱で、勿論すべてを読んだわけではないが、けっこうな数は読破していたと思う。そんな中に、過去の説についての紹介があったりすると、必ずと言っていいほど松本清張説もとりあげられていたことを思い出す…

「万葉翡翠」(1961)松本清張(「影の車」収録)と「万葉歌のなかの縄文発掘」

「Dの複合」は古本屋で入手したので最初に読んだが、松本清張の古代史関連の他の作品は、発表順に読むことにした。「万葉翡翠」は松本清張の古代史関連の記念すべき最初の作品である。万葉歌の探求も凄いが、犯罪の発覚するきっかけが短歌というのも(言い方…

Dの複合(1968)松本清張

「火の路」があまりに面白かったので https://hakuasin.hatenablog.com/entry/2024/01/20/161809 松本清張の他の作品も読んでみたいと思ったのだが、内容を調べてみるとどうしても食指が動かない。そんな中でも、やはり古代史関係等の作品がいくつかあるので…

火の路(1975)松本清張

先日、ゾロアスター教と古代日本の話を書いたが https://hakuasin.hatenablog.com/entry/2024/01/07/165920 実は、昔いったん興味を持ったのだろうか、2016年に松本清張がゾロアスター教と古代日本をテーマにした「火の路」(歴史推理)と「ペルセポリスから…

横溝正史の短編

先日横溝正史の「蝶々殺人事件」について書いたが https://hakuasin.hatenablog.com/entry/2022/03/10/055904 埋め草的に収録されていた短編2編を読んだのをきっかけに、横溝正史の短編をつらつら読み始めた。「真珠郎」2種(角川文庫版、扶桑社版)の埋め…

蝶々殺人事件 横溝正史

横溝正史の作品は、気に入ったものしかもっていなかった。由利麟太郎が主人公の長編は、以前表紙が印象的だったと書いた「真珠郎」だけであった。(その後、その表紙のものも入手した) https://hakuasin.hatenablog.com/entry/20050306/p1 角川文庫の杉本一…

八劔金毘羅神社の山の話から、龍興山神社の話へ、そして「十三の冥府」

同じ課の若い社員が、三戸出身という事を知り、ピラミッドに見える八劔金毘羅神社の山を地元の人はどう認識しているのか知りたくて聞いてみたら知らないという。その人の住んでいたことろはここからけっこう離れているのでそんなものなのかな、と思った(さ…

江戸川乱歩の「畸形の天女」

木下ほうか主演の「裸の天使 赤い部屋」が江戸川乱歩の「畸形の天女」の映画化である、という話題があった。大概の江戸川乱歩の作品は把握していたつもりだが「畸形の天女」は記憶にない。家にある光文社版江戸川乱歩全集を調べたら第16巻に収録で、少年向け…

北森鴻 浅野里沙子「天鬼越」(2014 文庫化 2016)未読

2010年に北森鴻が急逝し、その後未完の作品を浅野里沙子が完成させ出版された話は以前書いた。 http://hakuasin.hatenablog.com/entry/2014/06/26/044729 もうこれで最後だと思っていて、その後北森鴻について調べたりしなくなってしまった。それが、先日知…

「坂本龍馬殺人事件」(2018)風野真知雄

「坂本龍馬殺人事件」(2018)風野真知雄「歴史探偵・月村弘平の事件簿」シリーズの第5作であり、今のところ最終作であるが、出版年が2018年なのでまだまだ続編は期待できる。個人的には坂本龍馬は小説で有名になっただけで、世間が過大評価しているのでは…

「おくのほそ道」殺人事件(2017)風野真知雄

「おくのほそ道」殺人事件(2017)風野真知雄「歴史探偵・月村弘平の事件簿」シリーズの第4作である。芭蕉の「おくのほそ道(奥の細道)」や河合曾良の「旅日記」はいつか読もうと思っていながらこの歳まで来てしまったが、これきっかけで読もうかな。しか…

「信長・曹操殺人事件」(2014))風野真知雄

「信長・曹操殺人事件」(2014))風野真知雄「歴史探偵・月村弘平の事件簿」シリーズの第3作である。若干ページ数が減り、活字も大きくなったので長さは短くなったが読みごたえは充分。ある程度歴史を知っている人なら一度ぐらいは信長と曹操はどこか似て…

「縄文の家殺人事件」(2013)風野真知雄

「縄文の家殺人事件」(2013)風野真知雄「歴史探偵・月村弘平の事件簿」シリーズの第2作、待望の「縄文の家殺人事件」である。前作の「東海道五十三次殺人事件」もそうだったが、殺人に関わる人々の人間関係が切なくも深い。これがこのシリーズのもう一つ…

「東海道五十三次殺人事件」(2012)風野真知雄

「東海道五十三次殺人事件」(2012)風野真知雄数年前に「縄文の家殺人事件」というタイトルを見つけた。風野真知雄だし、縄文好きの身としてはほおっては置けない。しかし、これは「歴史探偵・月村弘平の事件簿」というシリーズの第2作にあたる。風野真知…

古事記異聞シリーズ 高田崇史

高田崇史古事記異聞 鬼棲む国、出雲古事記異聞 オロチの郷、奥出雲 古本屋で見つけて購入、QEDシリーズ、カンナシリーズ以来久々の高田崇史である。古代日本、古代出雲の謎については、いろいろな本も出ているし、さんざん読んできたつもりだったが、さす…

篠田節子「聖域」(1994)

古代東北を舞台にした未完の小説原稿をめぐるミステリー、という謳い文句をネット上で見つけて購入した。その未完の小説の内容も素晴らしかったが、作品はどんどんスピリチュアルな方向へ行き、個人的には大変面白かった。寡聞にしてこの作家の事を知らなか…

「実朝を殺した男―『吾妻鏡』殺人事件」(2004)楠木誠一郎

前置きがちょっと長い。以前、奥州藤原氏や義経関連の本を集めていた時、この作者の「義経の野望―異説『藤原四代記(1992)を読んだ。いわゆる歴史IFのシミュレーション小説である。その時はそのままになっていたのだが、最近、そういえば作者の事を知らない…

江戸川乱歩妖美劇画館 vol 1 vo 2

まだ読んでないので、紹介のみ。江戸川乱歩没後50年とうことで出版界も動きがあるが、過去の漫画化作品のコンピレーションを店頭で見つけて買ってしまう。内容はvol 1上村一夫 パノラマ島奇談桑田次郎 地獄風景vo 2石川球太 白昼夢 人間椅子 芋虫 お勢地獄…

荒巻義雄 「新説邪馬台国の謎」殺人事件

荒巻義雄 「新説邪馬台国の謎」殺人事件(旧題 「マ」の邪馬台国殺紀行)「産業考古学」という観点は非常に興味深い。また「義経埋宝伝説の謎を追え!」同様http://hakuasin.hatenablog.com/entries/2015/06/24シュメールからバビロニア語、タミル語、果ては…

荒巻義雄「義経埋宝伝説の謎を追え!」

荒巻義雄「義経埋宝伝説の謎を追え!」(旧題 義経埋宝伝説殺人事件」先日の「義経伝説推理行」http://hakuasin.hatenablog.com/entries/2015/06/22より前の出版である。こちらは小説であるが「義経伝説」についての主張は同内容とおもっていい。その盛り込…

内田康夫/長尾文子「死者の木霊」

内田康夫/長尾文子「死者の木霊」長尾文子による内田康夫作品の漫画化がほかにないかとさがしたら、あった。内田康夫のデビュー作である「死者の木霊」である。http://hakuasin.hatenablog.com/entry/2015/04/11/060602通常、こういう作品の漫画化に費やさ…

内田康夫/長尾文子「戸隠伝説殺人事件」

内田康夫/長尾文子「戸隠伝説殺人事件」ショックな出来事があった。わが家は複数の部屋に本棚がある。自分の部屋は押入れも本棚化している。そんな中、たまたま寝室の本棚を探ったら、先日誉めた内田康夫の「戸隠伝説殺人事件」http://hakuasin.hatenablog.…

内田康人「津和野殺人事件」

内田康人「津和野殺人事件」内田康夫の第13作めにして浅見光彦登場第4作、シリーズ第2作である。多重の謎が紐づいてゆく様はわくわくしたのだが、田舎の旧家の跡継ぎ詐欺?というところで一気に話が安臭くなって脱力した。しかし、話はここで終わらなかった…

内田康夫「夏泊殺人岬」

内田康夫「夏泊殺人岬」内田康夫の10作目にしてノンシリーズの作品である。夏泊と言えば、20年以上前に、単に車で一回りしただけで、いつかゆっくり訪れてみたいとはおもっているのだが、いつになることやら。「遠野殺人事件」についてちゃんと書いてい…

内田康夫「赤い雲伝説殺人事件」

内田康夫「赤い雲伝説殺人事件」内田康夫の9作目、浅見光彦3度目の登場にして「浅見光彦シリーズ」の第1作である。これまでの作品に比して、いい意味で文体が軽くなっておりサクサク読み進める。ここらへんで彼の後期に見られるスタイルが完成したか。本…

内田康夫「平家伝説殺人事件」

内田康夫「平家伝説殺人事件」内田康夫第5作にして「浅見光彦」再登場の作品である。この作品をあえて「浅見光彦シリーズ」と呼ばないのは「後鳥羽伝説殺人事件」で書いたように、作者は浅見光彦をこの作品までしか登場させないつもりだったからである。そ…

内田康夫「後鳥羽伝説殺人事件」

内田康夫「後鳥羽伝説殺人事件」内田康夫の第3作目にして「浅見光彦」初登場作品である。ウィキペディア等では「浅見光彦シリーズ第一弾」としているが、作者は当初「平家伝説殺人事件」までの2作で浅見光彦の登場を終えるつもりで書いていて、編集者や読…

内田康夫「死者の木霊」

内田康夫「死者の木霊」(1980)先日、こんな事を書いたのだがhttp://hakuasin.hatenablog.com/entries/2015/03/10やっと初期作品に着手することができた。コピーライター等をしていた作者が自費出版したというデビュー作である。探偵役は「信濃のコロンボ」…

浅見光彦シリーズと内田康夫

浅見光彦シリーズと内田康夫たまたま気が向いて「浅見光彦シリーズ」の漫画化のコンビニ本を買って読んでみたのだが、何か違和感を感じた。というのも、シリーズが安定してくると、浅見光彦の恋は、読んでる方も絶対に成就しない、という前提で読んでいるし…