ジョン・ラッターのフォーレ「レクイエム」

フォーレ「レクイエム」(第2稿 ジョン・ラッター校訂)
ジョン・ラッター指揮 シティ・オブ・ロンドンシンフォニア1984
ケンブリッジ・シンガーズ
キャロライン・アシュトン(S)
スティーヴン・ヴァーコー(Br)

フォーレの「レクイエム」の第2稿は自筆譜が失われており、校訂版が2種類ある事を今さらながらに知った(汗)今まで聴いてきたのは一般的なネクトゥー&ドゥラージュ版で、こちらがもう一つのジョン・ラッター版。
ジョン・ラッターと言う人は寡聞にして知らなかったが、作曲家兼指揮者で合唱曲の世界ではかなり著名な作曲家らしい・・・・
というわけで、最初は版の違いだけに興味があって聴き始めたのだが、版の違いなどどうでもよくなった。
実はフォーレの「レクイエム」もけこうヘビロテで聴いてきたので、自分の中のベストがかたまりつつあり、コルボの3種が、それぞれの特徴が捨てがたいので甲乙つけがたいベストかな、と思っていたのだが、このラッター盤はその一角に食い込んできた。というか若干凌駕している。
では、さてどこがいいのか、となると説明がしづらい。
合唱、管弦楽ともに、充分音価を取ったのびやかな演奏、とか、音量の大きさではない静かに迫り来る迫力、とかいろいろ文章を考えたのだが、この演奏の魅力を伝えきっているとは思えない。
ふと考えたのだが、今までフォーレの「レクイエム」を聴いてきて、無意識のうちに「ここはこうであったらよかったのに」といった形で、自分の中に理想のフォーレの「レクイエム」が形作られて来ていて、このラッターの演奏がそれに一番近いのでは、と思い当たった。(近い、というのは、部分的には他の演奏がいい部分もある、ということのなのだが)
いずれにせよ、これは超お勧め盤。

バレンボイムのフォーレ「レクイエム」

フォーレ「レクイエム」
バレンボイム指揮 パリ管弦楽団(1974)
エディンバラ音楽祭合唱
シーラ・アームストロング(S)
フィッシャー・ディースカウ(Br)
フォーレの「レクイエム」は(知っている限りであるが)古い指揮者による大時代的な演奏の録音が無い。例えばマタイ受難曲だったら、ピリオド演奏も大時代的なメンゲルベルクの演奏も両方楽しめるのだがフォーレの「レクイエム」はそういう事がができない。
と、思っていたらバレンボイム盤がトンデモ演奏というネット情報を見て興味本位で購入してしまった。
結論から言うと、言うほどトンデモ演奏ではない。
大変遅い演奏であること、かつピアニシモからフォルティシモまでの振り幅が非常に大きい。これは、ベートーヴェンのミサ・ソレムニスあたりを演奏するやり方である。フランス音楽としての愉悦やこの曲のもつ神秘性よりも悲壮感の方が先に立って入る。
これは、フォーレの意図したもの、そして我々がフォーレの「レクイエム」に求めるものとはかなりかけ離れている。
かけ離れてはいるが、決して奇をてらってものではなく、演奏自体は実に真摯である。なので、決して聴いていて不快にはならない。
最初の1枚には決して勧められないが、数枚聴いて、さらに別のタイプの演奏を聴きたい時にはこの最右翼の演奏がぴったりではないか。

ウェストミンスター大聖堂からのモテット集("Panis Angelicus")

ウェストミンスター大聖堂からのモテット集("Panis Angelicus")
オドンネル/ウェストミンスター大聖堂合唱団(1993)
イエイン・シムコック(オルガン)
モーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」の気に入った演奏が無くて
http://hakuasin.hatenablog.com/entry/2017/05/17/050637
ようつべで視聴しまくってたどり着いたCDである。
収録曲は以下のとおり

1.メンデルスゾーン:アヴェ・マリア(3つの宗教歌より)
2.バッハ:主よ人の望みの喜びよ(カンタータ147番より)(編曲:ウィテカー)
3.フランク:天使の糧
4.モービー:アヴェ・ヴェルム・コルプス
5.ロッシーニ: おお、救いのいけにえよ
6.ハリス:天は美し
7.ホルスト:アヴェ・マリア
8.グノー:アヴェ・マリア(編曲:モービー)
9.フォーレ:恵み深き御母マリア(2つのオッフェルトリウム 第2曲)
10.エルガー:アヴェ・ヴェルム・コルプス
11.モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
12.グリーグ:アヴェ・マリス・ステラ
13.ド・セヴラック:かくも偉大な秘蹟
14.ヴィレット:聖母賛歌(恩寵溢れる女よ)
15.シューベルト:詩篇第23「主は私の牧者で」
16.メンデルスゾーン:私は主を待ち焦がれ(交響曲第2番「讃歌」より第5番)
17.フォーレ:ラシーヌ雅歌
18.ホルスト:今こそ主よ、僕を去らせたまわん

フォーレの「ラシーヌ雅歌」は「レクイエム」と併録されていたりするが「恵み深き御母マリア」はたぶんこれを買わなければ聴けなかったろうからうれしい。
メンデルスゾーン交響曲第2番についてはこちら
http://hakuasin.hatenablog.com/entry/2014/08/11/044915
他にも、知らなかった作曲家やら「惑星」しか知らなかったホルストやらいろいろと助かる。
お目当てのモーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」は(あくまで個人的な好み)ベストではないが、かなり理想に近い。
いずれにせよ、天上の音楽揃いでこれはいい買い物をした。

篠田節子「聖域」(1994)

古代東北を舞台にした未完の小説原稿をめぐるミステリー、という謳い文句をネット上で見つけて購入した。
その未完の小説の内容も素晴らしかったが、作品はどんどんスピリチュアルな方向へ行き、個人的には大変面白かった。
寡聞にしてこの作家の事を知らなかったので、他の作品も読んでみたいと思ったのだが、この作品のレビューを見ると元々のファンからは期待外れという声があり、この作品はこの作家の中でも特異な存在であることを知った。
趣味でチェロを弾く、ということで、クラシック関連のタイトルの作品も多く、それにも惹かれるのだが、あらすじとかを見ると、私が求めているものとは違う気がする、
残念ながら、この人の作品はこの一作のみの邂逅となりそうだ。