ワーグナー「神々の黄昏」

クナッパーツブッシュ指揮 バイロイト祝祭劇場管弦楽団(1956)
大分前に
「結局は神々の王ヴォータンの欲やわがままや、自分勝手な思い込みで、彼の子供たち(ジークムント、ジークリンデ、ブリュンヒルデ)や孫(ジークフリート)が悲惨な目に会う話としか思えない」と書いた(こちら
基本的にはその意見は変わらないのだが、最終的にジークフリートブリュンヒルデの死を超越した「愛」が勝利する、という事をワーグナーは言いたいのだな、とわかってきた。
タンホイザー」であれ「トリスタンとイゾルデ」であれ、というかワーグナーは結局すべて「死を超越した愛による救済」という1つのテーマを、手を変え品を変えて、表現してきたのかもしれない。
前に「神々の黄昏」は全曲を通して聴き比べる、と書いたが、第3幕のジークフリートの死から「ジークフリートの葬送行進曲」そしてクライマックスの「ブリュンヒルデの自己犠牲」までが、結局「指環」全4作を通してワーグナーが表現してきた事の結論である、とわかったので、その部分を聴き比べ、全曲はその後ゆっくり聴く事にした。

ワーグナー「神々の黄昏」第3幕途中から

クナッパーツブッシュ指揮 バイロイト祝祭劇場管弦楽団(1951)
というわけで、以前書いた、1951年にレコード発売用に録音されたが、お蔵入りになり、1999年にやっと発売された音源の前述の部分を聴く。
さすがに、オケを拾うようなマイクのセッティングがされているのだろうか、オケはかなり生々しく、クナの表情付けも1956年より濃く、その迫力は並大抵ではない。多くの人が、クナの「神々の黄昏」のベスト、と推すのもわかる。
ただ、オケが迫力ある分、歌がたまにかき消されてしまう部分がある。ずっと1956年盤の、歌が前面に出るバランスで慣れた身には、逆に違和感があったりする。1956年盤の落ち着いた魅力も捨てがたい。難しいものだ。
1958年盤は、さらに枯淡の境地の「神々の黄昏」が聴けるという。うーん、なんとか聴いてみたい。
それもそうだが、あのティーレマンの「指環」(2008年)もえらく評判がいい。これから出る邦盤は高くて手が出ないが(っていうか、今まで入手したのが、異様に安いんだが(笑))輸入盤なら半額に近いな。でも朝比奈盤もあるしなあ。