「トリスタンとイズー」からいろいろ

日記には書いていないが、最近はけっこう読書三昧である。
トリスタンとイゾルデ」の原作である「トリスタンとイズー」を我々が読もうとするなら、まずは岩波文庫のジョゼフ・ベディエ編「トリスタン・イズー物語」であろう。
多くの異本、断片を一つにまとめてあり、漏れも少ないであろうから文献的にも満足できる。
次に、かのローズマリー・サトクリフこちらこちらこちら等)の「トリスタンとイズー」は、原型であるケルト伝説へ歩み寄り、キー・アイテムである「惚れ薬」を用いない事により、より人間ドラマとしての「トリスタンとイズー」を描いた。(同行異曲のエピソードを無くしてすっきりとまとめてある)
サトクリフは前書きで、原型のケルト伝説として
「ディアルミッドとグラーニャ」
「ディアドレとウスナの息子たち」
をあげているが、ネットでもよくわからなかった。
たまたま、以前買ってあった「世界の神話百科― ギリシア・ローマ ケルト・北欧編」というのをまたパラパラと見ていたら「グラーネ」という項目があり「ディアルミドとグラーネ」と言う物語がある事を知った。グラーニャはグラーネだったのだ!日本語表記が多数あると、調べるのも大変だ(笑)
で、この駆け落ち話はケルトの英雄のひとり「フィン・マックール」の物語の中にある。あれれ、サトクリフの「ケルトの白馬」(こちら)を読んだ後、ケルト関係を読もうと思って買ったはいいが、つん読状態だったサトクリフの「黄金の騎士フィン・マックール」というのがあったぞ・・・・で調べたら、ちゃんと「ディアルミドとグラーネ」の話があった(笑)
また、「ディアドレとウスナの息子たち」は一般には「デアドラ伝説」「世界の神話百科」では「デルドレ」これもやはりサトクリフの「炎の戦士クーフリン」の中に「ディアドラとウシュナの息子たち」の話があった(笑)
これでこの2冊は、いずれ「つん読状態」から解放され、無事に読まれるであろうことが確実になった。めでたしめでたし。
PS.サトクリフの「トリスタンとイズー」には、「白い手のイズー」の兄であり、トリスタンの親友となるカエルダンの悲恋のエピソードがある。これによりカエルダンの自分の身に置き換える事によるトリスタンに対する理解と同情につながり、かつトリスタンの死の遠因にもなる。
いろいろ調べたが出典がわからない。サトクリフのオリジナルであろうか。そうであるなら、さりげないようで実によく考えられた、読者を自然に納得させるようなエピソードである。さすがサトクリフ。

ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」

コンヴィチュニー指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(1950)
トリスタン:ズートハウス
イゾルデ:ボイマー
マルケ王:フリック
コンヴィチュニーの「トリスタン」もこの際押さえておきたかった。
予想通りに、過度な効果を狙わない、楷書のような、その分色気には欠けるが、ある意味「むき出し」の「トリスタン」で、逆に渋くて新鮮である。
しかし、音は、最近のこの年代のCDにしては、こもりがちで悪い部類にはいるだろう。放送用音源なのに・・・・
フルトヴェングラー盤でお馴染みのルートヴィヒ・ズートハウスと、名バスのゴットロープ・フリックは期待通り。
しかし、イゾルデのボイマー(バウマー)がビブラート全開の前時代的な歌唱で興をそぐ(これがいいと言う人も多いが)かつての名歌手のようだが、1898年生れとのことで衰えも感じられる。

ボイマー(バウマー)については、ここで一つ勉強した事がある。このボイマーのつづりは"Baumer"の"a"の上にちょんちょんがつく、ドイツ語独特のアルファベット「アーウムラウト」であるが、それをそのまま検索で入力するとエラーになる場合が多いが、これは"ae"に置き換えて検索すると、ちゃんと「アーウムラウト」として検索してくれるのだった!たぶん常識なんだろうが(汗)
ちなみに"o"「オーウムラウト」"u" 「ウーウムラウト」も、同様に"oe" "ue"