チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲

ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン
ペトレンコ:指揮 ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団(2008)
私は、ピアノもそうだが、ヴァイオリンも、特に思い入れが無く、有名なバイオリニストを聞き比べたりする、ということもないし、有名なヴァイオリン曲を集めたりもしない。
しかし、いわゆる「メンコン」「チャイコン」は、子供時代の刷り込みか、けっこう好きである。
で、以前も書いたが、私にとってのヴァイオリニストは、抑制の利いた中に、渋く表現される情緒性、わびさびの世界、ということで、ヘンリク・シェリングだったのだが、ヒラリー・ハーンがこれに加わった。(こちらこちら
で、チャイコンはいつでるのだ?と書いたのだが、先日隣町のショッピングセンターに入っている、タワレコで、店頭でこれを発見、けっこう発売直後である。
さて、相変わらず、なめらかさ、流麗さ、叙情性は充分ながらも、抑制の利いた、実に丁寧で、滋味あふれる演奏で、その分心にしみわたる。
これ見よがしのテクニックをひけらかすわけでもなく、派手なチャイコンを期待する向きにはあてが外れるかもしれない。(大胆なカットや装飾のあるアウアー版では無く、オリジナル版使用ということもあるだろう)
しかし、この演奏は、この曲の本来の奥深さを我々に教えてくれる。
これ見よがしのテクニックは無い、と書いたが、例えば、カデンツァで、指定されていない部分で、さりげなくオクターブ奏法を紛れ込ませるなど、油断のならない玄人好みのテクニックには溢れている。