ヴェルディ「ドン・カルロス」(仏語 5幕版)(1996)

指揮:アントニオ・パッパーノ指揮
パリ管弦楽団 
ロベルト・アラーニャ(ドン・カルロス)
トーマス・ハンプソン(ロドリーグ)
カリタ・マッティラ(エリザベート・ド・ヴァロワ)
ホセ・ファン・ダム(フィリップ2世)
ヴァルトラウト・マイアー(エボリ公女)
今まで聴いてこなかったヴェルディを大量に聴いてきたわけだが、全て良かった。
しかしあえて1作を挙げるとすると「ドン・カルロ」であり、なんとか映像でも見てみたかった。
イタリア語4幕版は、もう先日のヤノヴィッツ盤で満足しているので、できればオリジナルのフランス語5幕版(フランス語ではカルロではなくカルロスになる)を見てみたかったが、小学館のDVD本が中古で半額以下で入手できた。豪華キャストで超ラッキー!(ただし、オリジナルそのままではなく、現代校訂版との事)
ちなみに、4幕版との違いはおおざっぱに言って前回書いたあらすじ(こちら)の「スペインの皇太子ドン・カルロ(カルロス)とフランス王女エリザベッタは一目で恋に落ちるが、エリザベッタはドン・カルロの父フィリッポ(フェリペ)2世の妻となる事が決まった」の部分が仏語版の第1幕になり、イタリア語4幕版は、この部分が既にあったこととして話が始まっている。
なので、ストーリー的には仏語版のほうがすわりがいいのだけれど、イタリア語版で約3時間なのが、仏語版では3時間半になってしまう。ワーグナー並みの長さである。
歌手陣は、比較的新しい歌手にうとい私でも知っている人ばかりなので豪華であることはわかる。見目も麗しく若々しいのがいい。一昔前の映像は、実際の役よりみな老けていてあたりまえだっだ。
しかし、それでもあえて言うが、その分昔の歌手にあった、圧倒的な声の個性は少なくなってきた気がする。だからこれをCDで聴いたら、意外につまらなく感じたかもしれない。
昔はオペラは遠目で見るものであったが、映像発売の時代になれば、アップに耐えられなければならない。時代の流れではあるが、寂しい気はする。
エリザベート役はもうちょっと可憐でも良かったか。アラーニャの奥さんゲオルギューとか(いやちょうど結婚した年だから無理か)
今までヴェルディの傑作と言えば「リゴレット」「椿姫」「アイーダ」「オテロ」であったが、いわゆる最晩年の「アイーダ」「オテロ」が傑作である事には文句は無いのだけれど、ある意味、ヴェルディ・オペラの完成品のエッセンスの結晶の抽出品のような気がしてきた。だからこそ、初心者にもわかりやすい入門作としても最適なのだろうが、もう少しこってりとやってもいいのでは、となんとなく思ってきたのは事実だ。
しかし「運命の力」や「ドン・カルロ」を聴くと、まさにヴェルディ・オペラの完成品をこってりやっている感があり、コアなオペラ・ファンなら「アイーダ」「オテロ」よりこっちをとるのでは、と思い始めた。ストーリー的にも各登場人物の葛藤と宗教戦争をからめた深みのあるものである。
と、思ったら、世間的にも「ドン・カルロ」の再評価が始まっているらしい。そうなると他の音源も聴きたくなるなあ・・・いかんいかん(笑)
エボリ公女をアグネス・バルツァが歌う映像と音源があるが、指揮がカラヤンだ(涙)