ブルックナー 交響曲第5番

シューリヒト指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1963)
最近、この演奏について考えたことがある。
以前の文はこちら
あるサイトで、この演奏をほめながら、縦の線が合わないのが減点と書いてあるのを見かけた。
確かにところどころあっていない部分があるのであるが、私はそれが欠点には聴こえない。
実は往年のウィーン・フィル(というかウィーンの音楽)は縦の線を合わせるより、横のつながりを重視していた、という話がある(大昔買った、往年の名指揮者による「フィガロの結婚」の解説にあったと思う)残念ながら、その演奏は私は気に入らなかったのだが、記憶には残っている。
そういう意味では、実はシューリヒトのこの演奏は、ウィーン・フィルの特徴が良く出ている演奏なのである。(実は、この時はシューリヒトをウィーン・フィルが引っぱっていたのでは・・・という説があるくらいだ)
で、このテンポの緩急の差が大きいブル5の演奏に、実にこの横のつながり重視の演奏が合うのである。
以前、テンポの変化にダメ出しをしながらも「ブル5を聴こうかなとなると、ついついこのシューリヒト盤に手が伸びてしまう」と書いた、効し難い魅力の正体がわかった気がする。
色とりどりの糸が縦横に絡み合って、ダイナミックに波を打つ様を想像できるだろうか。
シューリヒトのこの演奏は、まさにそういった趣の演奏なのである。