ヴェルディ「リゴレット」

セラフィン指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団(1955)
マリア・カラス
ティト・ゴッビ
ジュゼッペ・ディ=ステーファノ

「女心の歌」は超有名でも、今までなかなか「リゴレット」と言うオペラを全曲通して聴く気にはなれなかったので、いい機会である。配役は、カラスと言えばディ=ステーファノとゴッビということで、いわゆる黄金トリオである。
どうしても「女心の歌」のイメージが強いのだけれど、実はこの「リゴレット」当時のオペラの常識をことごとく破った野心作であった、と言う事は知らなかったなあ。
もともとはユーゴーの「王は愉しむ」のオペラ化だったのが、王を貴族に変えたりとか、これも上演までは苦労があったようだ。勿論王侯貴族への批判が目的なんだろうが、救いが無い話はあまり好みでは無いな。


女たらしのマントヴァ公爵に仕えるせむしの道化リゴレット、娘が公爵の毒牙にかかったため復讐に殺し屋を雇うが、公爵を愛してしまった娘は、身代わりに殺される。悲嘆にくれるリゴレット天罰も受けない公爵。

傑作だ傑作だと言われながら、聴かず嫌いだった原因は、このストーリーに他ならない。

しかし、聴き始めると、後期の作品にも劣らない音楽の素晴らしさにびっくりしてしまう。
最初は、さすが、ステファノとかゴッビとか思いながら聴いていたが、だんだん、音楽の素晴らしさが勝ってきて、歌手よりもまず「音楽」というヴェルディの真骨頂ここにあり、といった感じ。今まで聴かなくて、随分損したな。
それでもやはり三人はすごい。初めて通しで聴いたにもかかわらず、これが名盤だということがよくわかる。

ちなみに、ヴェルディ自身が書いた
「「リゴレット」は途切れることのない一連の重唱であるべきで、アリアは仕方なくそこに置かれているに過ぎない」
という書簡があるようだ。
モーツァルトは既に重唱によるストーリー展開を成し遂げているが、アリア重視のイタリア・オペラにとって、確かにこれは革新だ。