ヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」

カラヤン指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団(1956)
マリア・カラス
ジュゼッペ・ディ=ステファノ
ローランド・パネライ
フェドーラ・バルビエリ
ニコラ・ザッカーリア

「イル・トロヴァトーレ」については何回か書いているが、LDでは所有していても、実はCDはもっていなかった。(LDも通して見たのは随分昔だ)
元々イタリア語訳がなかったスペインの戯曲をヴェルディが発見してイタリア語に翻訳させたというから、ヴェルディの情報網や恐るべし。「リゴレット」で見せた革新性が若干後退したせいもあってその分大衆受けが良く、初演から大成功だったようだ。
レオノーラを巡る恋敵ルーナ伯爵とマンリーコ(ジプシーのアズチェーナの息子の吟遊詩人かつ騎士)は、実は生き別れの兄弟(それを知るのはアズチェーナのみ)マンリーコをおびき出すだめに伯爵はアズチェーナを人質とする。
マンリーコは怒りに燃えて軍勢を繰り出す。ここで歌われるのが「見よ、恐ろしい炎を」
マンリーコは敗れ捕われるが、レオノーラが自分の体を代償に助命を乞う。ただし、マンリーコ救出後に死ぬためにあらかじめ毒を飲む。それを悟った伯爵は、騙された事を怒り、助命を取り消しマンリーコを即座に処刑する。
ここからが大どんでん返し。アズチェーナは伯爵の父に実の息子を殺されており、マンリーコを育てたのは復讐のためだった。伯爵に「お前が殺したのは実の弟だ、復讐は成った」と叫ぶ。
結局アズチェーナの手の中でみんな踊らされていたのだ、という落ち、おお怖わ。しかしマンリーコに対する「母親」としての愛情も持っていたというのだから、複雑な役どころ。
指揮は大嫌いなカラヤンであるが、カラスの「イル・トロヴァトーレ」のスタジオ盤はこれのみだからしょうがない。
しかし「蝶々夫人」と同じくカラヤンの早い時期のスカラ座との録音だから、カラヤンらしさが抑えられており許容範囲である。
曲は、心を沸き立たせる音楽が、畳み掛けるように繰り出され、なるほど、これなら大成功間違いなしと納得。
カラスが歌うと(内容的にはアズチェーナが中心だが)音楽的にはレオノーラを中心に据えるとこのオペラは落ち着きがいいのがよくわかる。
カラス以外も(細かい事を言えばきりが無いが)標準以上の出来と言える。ただし、「見よ、恐ろしい炎を」は、カラヤンとディ=ステファノのリズムがちょっと合わないが。
ちなみに、ネット上では、カラヤン・ファンはこの演奏は物足りないのだそうな。なるほどね、例のカラヤン節でないとだめなのね。こっちはそれが無いから、辛うじて聴いてあげているのになんという言い草だ(って、おまえもだ(笑))
カラヤンが大分カラスに譲っている」等と書いてある人もいるが、冗談ではない。当時の二人の力関係からしたらあたりまえではないか。カラヤン・ファンは傲慢だなあ(って、おまえもだ(爆))
久々にLDのほうも見てみるかな。