フェンビー編曲のディーリアス(残)

ディーリアス(フェンビー編)

舞曲

フルートと弦楽合奏のための2つの小品
        ラ・カリンダ
        歌と踊り

管弦楽のための5つの小品

フェンビー指揮 ボーンマスシンフォニエッタ(1978)(EMI)
エレーナ・デュラン(フルート)

 

2枚の水彩画(フェンビー編曲)
マリナー指揮 アカデミー室内管弦楽団(1971)(EMI)

マッケラス指揮 ウェールズ・ナショナル・オペラ管弦楽団(1990)(デッカ)

 

せっかくなのでフェンビー編曲のものの残りを聴く。
ラ・カリンダはヘリテイジBOXでフェンビー指揮が収録されていたが、こちらはフルートがリードをとる編曲。
管弦楽のための5つの小品を始め、他はピアノ曲からの編曲が多いようだ。
ディーリアスらしいチャーミングな曲揃いだが、「2枚の水彩画」の2曲目が「陽気に、ただし速くなく」と題されているにもかかわらず、どこか妙な暗さを引きずっている不思議な魅力がある。
「2枚の水彩画」についてだけ、聴き比べの感想を書くと、マリナーは透徹性があり、マッケラスはいつもと違って穏やかな柔らかさを持った音作りで、これは両者甲乙つけがたい。

ディーリアス 「弦楽四重奏曲」「弦楽オーケストラのためのソノタ」「去りゆくつばめ」(顛末記)

ディーリアス

弦楽四重奏曲
ブリテン弦楽四重奏団(1995)(EMI)
フィッツウィリアム弦楽四重奏団(1978)(デッカ)

弦楽オーケストラのためのソノタ(フェンビー編曲)
フェンビー指揮 ボーンマスシンフォニエッタ(1978)(EMI)

「去りゆくつばめ」(フェンビー編曲)
バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団(1968)(EMI)

そもそもは、EMIBOXで「去りゆくつばめ」(フェンビー編曲)を見かけて、日本と海外の「ディーリアスの楽曲一覧」で探した時にその曲名(英語名"Late Swallows")が見つからなかった事が発端だった。
よく似たタイトルの管弦楽付き独唱曲「去りゆくひばり」があるので、これの管弦楽化かしら、と思って聴き比べてみたらどうも違う。
これはディーリアスの遺稿かなにかをフェンビーが仕上げたんだろう、と結論付けようとした正にその時、EMIBOXのフェンビー編曲集と銘打たれた別のCDの解説に
"Sonata for String Orchestra"(弦楽オーケストラのためのソノタ)の第3楽章のタイトルが"Late Swallows"とあった。
そして同じCDに続けて弦楽四重奏曲が収録されており、その第3楽章がやはり"Late Swallows"である。
つまりは、弦楽四重奏曲を弦楽オーケストラ化したのが「弦楽オーケストラのためのソノタ」であり、その第3楽章を独立して演奏したのが「去りゆくつばめ」であったのだ!
EMIBOXでは、そのことをあきらかにするために、わざと続けて収録したに違いない。
「去りゆくつばめ」はしっとりとした非常にいい曲で、他の楽章は"With animation""Quick and lightly""Very quick and vigorously"と、演奏上の注意書きなのに、第3楽章のみが「去りゆくつばめ」という標題がついている。ディーリアス自身も特別な思いがあったのかもしれない。

弦楽四重奏曲版では、フィッツウィリアム弦楽四重奏団の方が全体に速めのテンポで躍動感があり、本来の弦楽四重奏曲としての演奏は、これが正解と思われる。
しかし、この曲はテンポを落とすと弦楽四重奏曲の範疇を越えた別の顔も見えてくる。ブリテン弦楽四重奏団盤とフェンビー盤は、ほぼ同じテンポ設定で、フェンビーがそこらへんを見抜いて弦楽オーケストラ化したのか、と考えると興味深い。

バルビローリ盤は、第3楽章を独立させた演奏という事もあろうが、最もテンポが遅く、いつものバルビローリとは別人のようなしっとりとした指揮ぶりで、他も全部こんな風にやればよかったのに、などと思ってしまう。。

フェンビーのディーリアス「幻想的舞曲」「ダンス・ラプソディ第2番」

ディーリアス「幻想的舞曲」
フェンビー指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(1981)(ヘリテイジ)

ディーリアス ダンス・ラプソディ第2番
フェンビー指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(1986)(ヘリテイジ)

「幻想的舞曲」は、ヘリテイジBOXのみに収録の初期の小品。ダンス・ラプソディ第2番はEMIBOXでビーチャムが指揮していた。

ビーチャム盤では派手派手しい曲に思えたが、フェンビーが指揮をすると何としっとりした曲に仕上がっていることか。
オペラを始め、まだまだ聴く曲はあるのだが、今回思い切ってBOXを3種類買ったのは正解だったと思う。
ディーリアスを一般の人に親しみやすく紹介するには、ビーチャム、バルビローリ、マッケラスのやり方が正解なのだろう。しかし、それでディーリアスの本質が損なわれてしまっては元も子もない。フェンビー(とティントナー)の演奏が録音に残っていて本当に良かったと思う。

ディーリアス ピアノ協奏曲 3種

ディーリアス ピアノ協奏曲

ハンドリー指揮 ロイヤル・リヴァプールフィルハーモニー管弦楽団(1994)(EMI)
ピアース・レイン(pf)

ギブソン指揮 ロンドン交響楽団(1969)(デッカ)
ジャン=ロドルフ・カールス(pf)

デル・マー指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(1990)(ヘリテイジ)
フィリップ・フォーク(pf)

グリーグと親交のあったディーリアスが、1888年のロンドンで、グリーグ本人が演奏するかのピアノ協奏曲を聴いて影響を受けて作曲したもので、元々は「ピアノと管弦楽のための幻想曲」(1897)だったものが、改訂を経てピアノ協奏曲の形になったのが1904年、さらに改訂をし、最初の改定で書き足されたものを廃棄して、最初の版に近いものが完成したのが1907年、との事。
以上がウィキペディアからの情報で、漠然と1897年版と1907年版が1楽章形式、1904年版が3楽章形式かと思った。

だが、通販サイトのアンドリュー・デイヴィス盤の説明に

現在では1907年に初演された「1楽章形式」のヴァージョンで演奏されることの多いディーリアスのピアノ協奏曲。アンドリュー・デイヴィスとハワード・シェリーは、1897年に作曲された「3楽章形式」の原典版を採用。

とあって、1897年版が1楽章形式なのか、3楽章形式なのかわからなくなった。
3種のBOXに収められているのは、ハンドリー盤がトラックが3つ、ギブソン盤とデル・マー盤がトラックが1つ、しかし何回か聴いてみたがすべて同じ版のように聴こえる(違ったらごめんなさい)が、どの版かはわからない。
この曲は、聴きなれると妙な推進力があってちょっとはまってくる。
3種の中ではギブソン/カールス盤がちょっと派手派手しい分演奏が若干荒いか。あとの2種は抑制が効いているが、ハンドリー/レイン盤は導入部がせわしない。僅差でデル・マー/フォーク盤を採るか。

ディーリアス 歌劇「フェニモアとゲルダ」間奏曲 4種

ディーリアス 歌劇「フェニモアとゲルダ」間奏曲

ハンドリー指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1977)(EMI)

マッケラス指揮 ウェールズ・ナショナル・オペラ管弦楽団(1991)(デッカ)

フェンビー指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(1983)(ヘリテイジ)

ティントナー指揮 シンフォニー・ノヴァ・スコシア(1991)

静逸かつチャーミングな小品で、3BOXとティントナー盤に収録されている。
今回は4つ共にこの曲の魅力を充分に伝えているが、やはりフェンビーの慈しむような演奏が印象深い。