「神田川」見立て殺人(2003年)

鯨統一郎
先日日記に書いた作品を読んだ。これは、タイトルで期待して読むと、もしかして裏切られるかもしれない。探偵役は「間暮警部」「まぐれ」と読む。もちろん、シムノンの「メグレ警部」にかけてあるが、「まぐれあたり」の「まぐれ」にもかけてある。この探偵がはんぱではなくとんでもない。現場に現れて、とつぜん昭和歌謡(フォーク)を歌いだし、無理やり「見立て殺人」だと決め付ける。さらに突然「ウルトラセブン松坂慶子が出ていたのを知っていますか」などと言う。それでも、実は裏では綿密な推理を立てているのかとおもいきや、当たっているのは結果だけで、真相は語り手の恋人(共に探偵事務所の人間)が解き明かすのだったりする。さらに事件後「被害者は宇宙人で、犯人はそれを察知して地球侵略を防いだ」などと言い出す。そして、曲の歌詞の矛盾点を、強引に自分が謎をといたきっかけだとのたまう。このトンデモ警部の謎が、最後には解き明かされるのかと思いきや、読者はほうられっぱなしで、話は終わってしまうのだった。こういうおふざけが過ぎる作品が苦手な人はダメかもしれないが、わたしはけっこう楽しめたのだった。まさに鯨さんの真骨頂だ。
この人は年齢不詳ということになっているが、1998年に、ある集まりが「鯨統一郎質問会」というのを催していて(ネットに公開している)その中で「40歳」であると語っているので、誕生日後なら1958年生まれである事がわかる。またまた私とほぼ同世代である。みんながんばってるなあ。