PURE DYNAMITE―ダイナマイト・キッド自伝(1999:邦訳 2001)

ダイナマイト・キッド
子供の頃はいざ知らず、いわゆる新日ブームと言われた頃にプロレスを見ていた時は、台本があるということはありえない(そんなのいちいち覚えていられないだろう)と思っていたが、大体の筋書き(ベビーフェースとヒールの関係、興行主と雇われの関係、興行の流れから、ここはどっちが勝つべきか等)などがあるとは思っていた。レスラーは自分たちのセンスで臨機応変にあうんの呼吸で試合を組み立てていたのであり、面白い試合というのは、そういうことがうまく出来るレスラーの素晴しさのおかげだ、とわかっていた。(場外に落とされた後、きまって若手レスラーがそのレスラーを囲み、次にカメラに映ったときは、きまって流血・・・・というのは、プロレスファンとしても、いい加減やめてほしかったが・・・・・)
プロレスの暴露本が出るようになって、プロレス界の裏話と言うのはそう目新しいものではないのだろうが、やはりキッドの書いたものともなると興味深い。全日電撃移籍の直後、馬場のオフィスにデイビーボーイ・スミスと行くと、なんと坂口と馬場が事後処理の打合せの真っ最中・・・うーん生々しいぞ。
しかし、WWFが全米を席巻したあの時代が、いかに異常だったのかが、その真っ只中にいたキッドの話で良くわかる。レスラーがステロイドに頼らなければならなくなったと言うのも、遠因は明らかにWWFであった。