モーツァルト「フィガロの結婚」

私にとって忘れられない映像がある。1980年カールベーム最後の日本公演で、NHKで放送されたものである。もう20年以上も経っているのだからNHKも発売すればいいのに。(ついでに、翌年ミラノスカラ座のクライバー指揮のラ・ボエームも!)配役はフィガロ:ヘルマン・プライ、本来彼はハイバリトンで、フィガロはバス・バリトンの役柄だから低音部とかはかなり大変なのだが、当時はフィガロといえばとにかく彼がはまり役だった。伯爵:ベルント・ヴァイクル。スザンナ:ルチア・ポップ(早世が悔やまれる)伯爵夫人:グンドゥラ・ヤノヴィッツ(ポップと並ぶわが最愛のリリコソプラノ)ケルビーノ:なんとアグネス・バルツァベーム指揮ということで、とっくに卒業したズボン役(アルトやメゾ・ソプラノが少年役をやること)を買って出た。おかげでファンは素晴らしいものを見られたわけだ。
さて以上の豪華なキャストでライブならではの躍動感あふれるベームの指揮で(こまかいミスやずれはあるものの)かなりの名演で、これを見てから他のソフトを買ってみても物足りなくてしょうがない。何よりも、たいていは頭のよいスザンナのいいなりに描かれる伯爵夫人が、大変お茶目でチャーミングな女性として描かれている演出がすばらしい。
ヤノヴィッツが「かわいい魔女ジニー」とかぶってくるぐらいの名演である。(勝手に似てると思ってる)
ショルティ指揮の映像はヤノヴィッツ、ポップの出演だが、伯爵夫人が上記のようなキャラではなく、劇場のせいか全体的に暗い印象だ。
ベーム指揮プライ主役の映像はオペラ映画であり、映画はあくまで映画であってオペラ舞台ではない。その他、どの映像も私は満足できない。頼むからNHKよ!発売してくれ!
さて、CDとなると、やはりベーム指揮のものがほぼ同じ配役なので、とりあえずこれでOKか。