レハール「メリー・ウィドウ」

メルビッシュ音楽祭(1993)
だいぶ前に買っていたが、やっと見ることができた。知らなかったがメルビッシュ音楽祭とはオペレッタ専門の音楽祭でオーストリアの湖畔の野外ステージが舞台である。メリー・ウィドウといえば、20数年前のウィーン・フォルクスオーパー来日公演の映像を記憶しているが、いかにもオペレッタ専門の歌劇団のこじゃれた楽しいステージで、それ以来、なかなかそれに匹敵する映像にお目にかかれなかった(オペレッタ自体の映像が「こうもり」以外極端に少ないのも事実)
今回も実はだめもとで購入したのだが、うれしい誤算で、ずいぶんフォルクスオーパーの雰囲気がするなとおもったら、この音楽祭の総監督がフォルクスオーパー出身、出演陣ものきなみフォルクスオーパー所属ではないか。野外という特殊な舞台だが、やっとこのオペレッタも標準として薦められる映像に出会った。その野外舞台だが、横幅も奥行きもかなり広く、それを生かした演出がなされている。随所にダンサー陣が、舞台を壊さない品のよさで、歌手の後ろで踊っていたり、主役二人が自転車の二人乗りをする場面もある。客席と舞台の間には幅広い水路があり、ボートがうかんでいたりして、なかなか楽しめる。そもそも、このオペレッタは20世紀初頭の作品で、随所にこんにちのミュージカルへの萌芽が見られ(女のマーチ等)実は、音楽史の観点から見ても、オペラとミュージカルの橋渡し的な重要性を持っている(と個人的に思っている)
以下簡単なストーリー。貴族の男性と平民の女性の恋人同士、男の親族の猛反対で、男が説得に手間取っているうちに女性はあてつけに年老いた富豪と結婚し、あっという間に未亡人に。夜ごとパリの社交界をにぎわすが、彼女が他国の男と再婚したら、祖国(架空の小国)の財産が他国に流出するという国家問題に。外交官でもある男性に、政府筋から彼女に結婚の申し込みをするよう厳命が下る。互いにまだ愛し合っている二人だが、男性は財産目当てのプロポーズと思われたくない。そして意地の張り合いに、もう一カップルの浮気騒動がからむ。業を煮やした女性が「亡き夫の遺言で、再婚したら全財産は自分の手を離れる」と宣言。安心して愛を告白する男性。「再婚したら全財産は自分の手を離れ、新しい夫のものになる」という落ちがつく。
PS.1点だけ苦言、彼女が彼が今も自分を愛していると確信するシーンの字幕が誤訳っぽい。ここではっきり語らせないと、なぜ彼女がうれしそうに歌うのか、さっぱりわからなくなる。
PS2.「唇は語らずとも」は、メロディを聴けば、誰もが一度は耳にしたことがある名曲で、私も大好きなのだが、アナログ時代藤原義江のSP復刻に「高鳴る調べに」というタイトルで、日本語で歌われていたのを思い出す。この日本語がまた良かった。(堀内敬三氏)細部は失念したが、いつか歌ってみたいものだ(キーは下げてね)こんな感じだった気がする。
高鳴る調べにいつか  心の悩み(迷い?)もとけて  言わねど知る 恋心  思う一人は(思う人こそ?) 君よと ワルツの調べに ○○○○○ この思いを告げよと囁く 口は閉じても 心にはかよう ○○○○○ ○○○○○
だれかご存じないか?