モーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」
カール・ベーム指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1969)
グンドゥラ・ヤノヴィッツ(フィオルディリージ)
クリスタ・ルートヴィヒ(ドラベッラ)
オリヴェラ・ミリャコヴィチ(デスピーナ)
ルイジ・アルヴァ(フェルランド)
ヘルマン・プライ(グリエルモ)
ヴァルター・ベリー(ドン・アルフォンゾ)
監督:ヴァーツラフ・カシュリーク
オペラ映画である。何回か書いているが、一般には評判のいい、ポネル演出のオペラ映画「フィガロの結婚」の過剰な映像演出が苦手だった私は、どうしてもオペラ映画には二の足を踏むが、今回せっかく、ストーリーが苦手だ、ということで敬遠してきた「コジ・ファン・トゥッテ」を聴くことにして、その映像も見たい、となると、やはりファンであるヤノヴィッツの映像があるのであれば、これを選ばざるを得ない。
ちなみに、この時代の映像であれば、既にヴィデオやLDで発売済みのものがDVD化されるものだが、この映像は記憶になく、どうも2009年初めて商品化された模様(ネット情報によると銀座のヤマハホールで上演されたことがあるとか、ちなみにポネル演出の「フィガロ」を私が見たのも銀座のヤマハホールだった)
で、見てみると、映像の横幅の狭さ、低予算で、いかにも作り物感丸出しの舞台装置と劣化した映像から、これはオペラ映画ではなくテレビ・オペラではないか?と思った
しかし、そのある種陳腐な映像が、この物語が一種の「お伽噺」「寓話」である、という印象を与えていて、個人的には好感を持った。
というのも、何回か書いているが、このオペラをなかなか見たり聴いたりしないのは、ストーリーが個人的に不快なためだが、こういう映像だと、ストーリーの不快さも、バカな登場人物のバカげたお伽噺だ、と突き放して見れるので、モーツァルトの音楽自体を楽しむ事ができるからなのだ。
歌手陣は間然するところがない。特に先日のフィガロのベリーはやはり演技が素晴らしい。
ベームのオフィシャルの「コジ・ファン・トゥッテ」は1958年のスタジオ盤、この1969年の映画盤、そして、ザルツブルク音楽祭1974年ライブで、徐々に歌手が交代してゆくさまが、歌手の最盛期の流れがわかって面白い。
フィオルディリージ:シュヴァルツコップ→ヤノヴィッツ→ヤノヴィッツ
ドラベッラ:ルートヴィヒ→ルートヴィヒ→ファスベンダー
デスピーナ:シュッティ→ミリャコヴィッチ→ポップ
フェルランド:アルヴァ→アルヴァ→シュライアー
グリエルモ:パネライ→プライ→プライ
ドン・アルフォンソ:シェフラー→ベリー→パネライ
PS.知らなかったが、この時期ヤノヴィッツはけっこう恰幅が良かったのだな(汗)