ベーム 1966年の「フィガロの結婚」の映像

モーツァルト  「フィガロの結婚」(モノクロ映像)
ベーム指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(1966:ザルツブルク音楽祭
アルマヴィーヴァ伯爵:イングヴァル・ヴィクセル
伯爵夫人:クレア・ワトソン
スザンナ:レリ・グリスト
フィガロ:ヴァルター・ベリー
ケルビーノ:エディト・マティス
マルチェリーナ:マルガレーテ・ベンツェ
バルトロ:ゾルタン・ケレメン
バジリオ:デイヴィッド・タウ
ドン・クルツィオ:アルフレート・プファイレ
アントニオ:クラウス・ヒルテ
バルバリーナ:ディードル・エイゼルフォード

実は、けっこう前に買っていたのだが、なんとなく機会を逸していた。
フリッチャイのフィガロを聴いたので、その流れで見る。
結論から言う。演奏、(端役にいたるまで)歌唱、演技、全てにおいて完璧に近く、個人的にヤノヴィッツ、ポップ、ヴァイクルのファンであることを除外したら、モノクロかつモノラルだということを考慮しても、かの映像演出過剰のポネル演出の映画版(1976:ベーム指揮)と、ウィーン国立歌劇場日本公演(1980:ベーム指揮)をしのいで、まず第一に推薦する「フィガロの結婚」の映像と言える。
演奏は、かのベームのスタジオ録音の名盤の前年、かつ、ライブならではのドライブ間で、文句のつけようが無い。
フィガロのベリー(個人的にはお馴染み)は、バリトンのヘルマン・プライが声域的に無理があるのを承知でフィガロにコンバートして大当たりをとる前は、間違いなくフィガロの第一人者であったろうことは、この映像を見れば(聴けば)容易にわかる。スタジオ盤や映画版もベリーでもよかったかもしれない。
以前に紹介した
http://hakuasin.hatenablog.com/entries/2011/12/01
http://hakuasin.hatenablog.com/entry/20111202/1322770045
レリ・グリストの素晴らしいこと!ポップより前にこのスザンナを見て(聴いて)いたら、私のスザンナは彼女だったろう。
伯爵夫人のワトソンは、今まで辛い点をつけてきたが、この伯爵夫人は完璧、グリスト同様、ヤノヴィッツの前に彼女を見て(聴いて)いたら、私の伯爵夫人は彼女だったろう。映像、録音共にソフトに恵まれなかった彼女、の面目躍如の貴重な記録と言える。
ヴィクセルの伯爵は歌唱もさることながら、いかにも伯爵らしい、下品過ぎないフェロモンが素晴らしい。
マルチェリーナのベンツェも役柄にぴったりだ。
あえて言いがかりに近い注文をつけるなら、ハンガリーの名バス、ケレメンは、本来バスバリトンなので、バルトロを歌うにはキーが高い。同様にスタジオ盤でスザンナを歌ったマティスのケルビーノは本来のメゾの歌手であって欲しかったが、姿は抜群にいいからしょうがないか。
オペラの映像が一般化するの1970年代だから、それ以前は録音でしか判断できない事が多いのだが、この時期の歌手の歌唱力、演技力の水準の高さを知るには最適のソフトであろう。