トスカニーニの ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

ニュルンベルクのマイスタージンガー
トスカニーニ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1937)
ザックス:ハンス・ヘルマン・ニッセン
ポーグナー:ヘルベルト・アルセン
エヴァ:マリア・ライニング
マグダレーネ:ケルスティン・トルボルク
ワルター:ヘンク・ノールト
ダーヴィト:リヒャルト・サラバ
フォーゲルゲザング:ゲオルク・マイクル
ナハティガル:ロルフ・テラスコ

フルトヴェングラーときたらトスカニーニを聴かねば(笑)
トスカニーニワーグナーのオペラは管弦楽や一部の録音はあっても全曲録音が残っているはこのマイスタージンガーだけである。(バイロイトで1930年に「トリスタンとイゾルデ」と「タンホイザー」1931年に「パルジファル」を振っているが、さすがに録音はない)
そのマイスタージンガーをずっと欲しかったが長年高値がついていた。しかし、わたくしあるあるであるが、今回フルトヴェングラーマイスタージンガーを聴いたので、日本語で検索してみたら邦盤が廉価で発売されていた(汗)ので慌てて購入。
1937年のザルツブルク音楽祭におけるライブ録音である。1935年からザルツブルク音楽祭に招かれていたトスカニーニであるが(フィデリオファルスタッフ)1936年にマイスタージンガー等を指揮し1937年に魔笛等を指揮しているが、それが最後のザルツブルク音楽祭となった。そう、翌年からはナチス・ドイツの台頭によりトスカニーニが辞退したのである。

さて前置きが長くなったが、第1幕への前奏曲フルトヴェングラー同様音が悪いが、やはり本編に入るとなんとか聴けるレベルに持ち直す。マイクの位置のせいか、木管が大きく弦が引っ込み気味、歌手もそのせいか、たぶん立ち位置の違いで声が随分ひっこむ。
しかし演奏自体はトスカニーニらしいきびきびした演奏で、フルトヴェングラーとは違った意味で縦横無尽、こちらもけだし名演。
歌手陣は寡聞にして「ばらの騎士」でお馴染みのマリア・ライニングしか知らないが、当時の名歌手揃いとの事で、こちらも間然するところがない。

フルトヴェングラーの ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

ワーグナーニュルンベルクのマイスタージンガー」(モノラル)
フルトヴェングラー指揮 バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団(1943)
ヤーロ・プロハスカ(ザックス)
マックス・ローレンツ(ヴァルター)
マリア・ミュラー(エーファ)
オイゲン・フックス(ベックメッサー
エーリヒ・ツィンマーマン (ダーヴィト)
カミラ・カラープ(マグダレーネ)
ヨゼフ・グラインドル(ポーグナー
エーリッヒ・ピーナ(夜警)
ほか
そういえばフルトヴェングラーの「マイスタージンガー」を聴いたことがなかった、と思いつき、調べたら入手しやすい値段で出品されていたので、買ってしまった。戦時中のバイロイト音楽祭の録音である。
第1幕への前奏曲が音が悪く、このまま続くときついな、と思ったが本編に入るとかなり持ち直したのでほっとする。
しかし、残念な事に第1幕冒頭の三重唱と肝とも言うべき第3幕の五重唱でこれはかなり痛手。
演奏であるが、今までマイスタジンガーをいろいろ聴いてきて、ヴァルヴィーゾやらカラヤンやら名盤はあるものの、やはりクナッパーツブッシュの自然な息遣いの音楽が一番かな・・・・と思っていたのだが、これはすごい。激しさと自然さが一体となっている驚異的な演奏である。第3幕への前奏曲から受ける感動は、これまで聴いた中でもトップクラスである。
ザックスのプロハスカは個人的には泣き節が過ぎる気がする。ローレンツも同様にヴァルターにしては激しすぎるか。
1943年なのにポーグナーがクラインドル?と思ったら、31歳のバイロイトデビューとの事。こんな早くからバイロイトで第一線で歌っていたのだ。すごいな。31歳なら無理かと思うが、こちらがザックスでもよかった気がする。
他は夜警がが弱いほかは間然するところがない。
しかし、返す返すも欠落部分が惜しい。ネットによると一時期完全なテープが発見されたというニュースがあったらしいが、その後の音沙汰がないとの事。なんとかならんものか。

 

カラヤン ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」(1951)

ワーグナーニュルンベルクのマイスタージンガー
カラヤン指揮 バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団(1951)

ハンス・ザックス : オットー・エーデルマン
ヴァルター・フォン・シュトルツィング : ハンス・ホップ
エヴァ : エリザベート・シュヴァルツコップ
ファイト・ポーグナー : フリードリヒ・ダールベルク
クンツ・フォーゲルゲザング : エーリヒ・マイクート
コンラート・ナハティガル : ハンス・ベルク
ジクストゥス・ベックメッサー : エーリヒ・クンツ
フリッツ・コートナー : ハインリヒ・プランツル
バルタザール・ツォルン : ヨゼフ・ヤンコ
ウルリッヒ・アイスリンガー : カール・ミコライ
アウグスティン・モーザー : ゲアハルト・シュトルツェ
ヘルマン・オルテル : ハインツ・タンドラー
ハンス・シュワルツ : ハインツ・ポルスト
ハンス・フォルツ : アルノルド・ヴァン・ミル
ダーフィト : ゲルハルト・ウンガー
マグダレーネ : イラ・マラニウク
夜警 : ヴェルナー・ファウルハーバ


以前こんなことを書いたのだが
http://hakuasin.hatenablog.com/entry/2016/12/23/043526
実は、この後クンツがベックメッサーを歌うこのカラヤン盤を入手していた。しかし、その時は宗教音楽サイクルの真っただ中、さらに次はフォーレ・サイクル、ベルリオーズ・サイクルとなってしまい、すっかり聴く機会を失って1年以上たってしまった。
しかし、今回クリュイタンスの「マイスタージンガー」を3種聴いたので、この機会を逃すまい、と聴いてみる。
ちょっと前にクンツの映像を見たのも、シンクロニシティかもしれない。
http://hakuasin.hatenablog.com/entry/2018/02/11/065945
さてこの録音、1951年ということで、なんとなく発掘音源かと思っていたら、まさかのオフィシャル録音。ただし、レコードというものが発明されてしばらくの間、レコードとは、たとえばライブ演奏そのままの「記録」ではなく、完成品の「記録」という意味を持っていた。なので、この録音もこの年の計4回の公演と1回のリハーサルの継ぎ接ぎだそうである。(ところどころ編集点があるが、あまり気にならない)
以前、カラヤン指揮 シュターツカペレ・ドレスデン(1970)を聴いた時「まるでマントヴァーニ」と書いたが
http://hakuasin.hatenablog.com/entry/2016/10/17/045336
バイロイト祝祭管弦楽団も見事に(?)マントヴァーニになっている。
かなりオケが前に出ていて、明らかに歌に絡むようにフレーズが強調されているのが新鮮である。(バイロイトはオケの音がひっこんでいるはずだから、オフィシャル用にマイクをピットの中にも立てたか?)ライブならではの躍動感もあり、ドレスデン盤も名演だったが、こちらも負けてない。ただ、オケが大きすぎて歌をかき消してしまっている箇所があるのは残念。
さて、お目当てのクンツであるが、ベックメッサーという喜劇的敵役に必要なすべてを備えているといっても過言ではない。第2幕後半のザックスとの掛け合いでは観客の笑い声が聞こえる。どれだけコミカルな名人芸だったのだろう。映像も残っていて欲しかった。
ザックスが大好きなエーデルマンなのがうれしいが、1952年のクナッパーツブッシュ盤よりさらに出来がいい。
シュワルツコップフルトヴェングラーの「フィデリオ」(1950)
http://hakuasin.hatenablog.com/entry/2012/07/20/043129
同様、後年の強い癖がまだ出ない頃で好ましい。1953年のフィガロではもう癖が出ているので分岐点は1952年頃なんだろうか。その頃の録音は手元にないのでわからないが。
ヴァルターのホップが若干弱いが他の歌手は間然するところが無く、これ以上を望むのは贅沢と言うものかもしれない。
上記のクンツの時にも書いたが、クンツがベックメッサーを演じるもう一つの名盤のライナー盤もいつか聴きたいな・・・
ステレオだとヤノヴィッツエヴァを演じるクーベリック盤も聴きたい。

娘もとうとう17歳

昨日は娘の誕生日。とうとう17歳、感慨深い・・・・