「三国志」合戦事典

柘植久慶
三国志というタイトルだけで、あまり期待せずに、まあ今後の資料になるかな程度で買ったのだが、不勉強な私は柘植久慶を聞いたことがあるという程度でよく知らなかった。膨大な著作がある軍事評論家だったとは、買った後に知ったのだった。通常の合戦の概要の他に、彼の評論が付くのだが、これが、歯に衣を着せず曹操劉備もけっこうけちょんけちょんである。それがなんか新鮮で面白く読ませてもらった。
以前私は、安能務氏の言をひいて、三国が統一できなかったのは金の問題だったと書いたことがある。柘植久慶の評論が的を得ているかどうかは私には判断がつかないが、信用するとしたら、金の問題プラス、統一するだけの才能をもった人間がいなかったからなのかもしれない。
才能をもった人間がいない→三国を統一できない→三国に分かれた状況は、かっこうの物語の種になる→物語は面白くなくてはいけない→英雄が出てこなくては、面白くない→統一できなかったのは群雄割拠の英雄達が争ったせいである。こんな感じで、物語の三国志は史実と違った様相を見せて、発達していったのである。