A・E・ヴァン・ヴォクト「原子の帝国」「見えざる攻防」

A・E・ヴァン・ヴォクト「原子の帝国」(1959)
雑誌掲載は1947年のほぼ長編と言っていい中編。
はるか昔の大戦争の後、科学技術は残っても科学知識は後退し、科学者は原子を神とあがめる宗教団体の聖職者になっている時代、放射能の影響で生まれた奇形児、ミュータントである皇帝の孫の物語。
皇室内の勢力争いの陰謀、対外戦争、等々をたんたんと描き、主人公が成長し、状況を切り抜けて生き残り、最後にどこに到達したか、という宇宙叙事詩的趣きをもっており、他のヴァン・ヴォクトの作品をだいぶ印象が違う。(ただし到達点の大仰さはいつものヴァン・ヴォクト節)
けっこう気にいったし、この設定がこれだけだともったいないなと思ったら、「リンの魔術師」という続編もあるようだ。しかし、ネットで調べても久保書店から出ていたらしい、という事までしかわからなかった。再発は難しいかな。

A・E・ヴァン・ヴォクト「見えざる攻防」(1959)
「原子の帝国」に併録されている雑誌掲載が1946年の中編。
異次元ものであるが、やはり導入部はお得意の「五里霧中」パターン。それでも終結部に向かってどんどん面白くなる。短編集の時に書いたが、この人はあまり長くない話の方が面白いかも。