ベーム 1956年の「フィガロの結婚」

モーツァルトフィガロの結婚
ベーム指揮 ウィーン交響楽団(1956)
パウル・シェフラー:伯爵
セーナ・ユリナッチ:伯爵夫人
ヴァルター・ベリー:フィガロ
リタ・シュトライヒ:スザンナ
クリスタ・ルートヴィヒ:ケルビーノ
イーラ・マラニウク:マルチェリーナ

カール・ベーム・コレクション Vol.3 である。
以前にも書いたが、初めて見た「フィガロ」は晩年のベームの日本公演であった。なので、ベームは私にとってある意味リアルタイムの指揮者なのであるが、この1956年という年は、そのたった2年前までフルトヴェングラーが生きていた、という私にとってはある種伝説的な時代なので、ベームがこの年に「フィガロ」の最初のスタジオ録音を録音している、というのは、なんか不思議な気がする。
その後の演奏より若干速い部分もあるが、細部をおろそかにしない、地に足のついた演奏でありながら独特の推進力がある『ベームフィガロ」という基本形は、既にこの頃から変わらない。
しかし、1956年のモノラルにしてはちょっと音が悪いか(この頃のもっといい録音状態のCDをいくつか知っている)重唱で聴こえない声部があるのは困る。特に第2幕第14曲の三重唱は伯爵の声がほとんど聞こえない。
さて、以前触れた、ベーム 1966年のザルツブルグ音楽祭の「フィガロ」の映像
http://hakuasin.hatenablog.com/entries/2013/07/03
で、ヴァルター・ベリーのフィガロがあまりに良かったので、CDでも欲しくなってこの録音を買ったのだが・・・・これに関しては期待外れ。
この2年前のフルトヴェングラーの「ドン・ジョヴァンニ」でもそうだったが、ベリーはバスにしてはキーが高く、発声が高めの音程になって安定しない。こちらはスタジオ盤なので、かなり本人も気を付けているのだろうが、音程を安定させようとしすぎて力みが入って、逆に不安定になってしまっている、という悪循環である。
年を取って、声が太くなって、やっと安定してきて、後の名バスになるのだな、と今さらながらに納得した。
他の歌手は若き日のルートヴィヒから脇のマラニウクに至るまで当時の名歌手ぞろいで、この時代の雰囲気を味わえる。