クリュイタンスのビゼー「カルメン」(ドイツ語歌唱)

ビゼーカルメン」(ドイツ語歌唱)
クリュイタンス指揮 ケルン放送交響楽団&合唱団(1958)
カルメン/イラ・マラニウク
カエラ/アニー・シュレム
ドン・ホセ/ハンス・ホップ
エスカミーリョ/ヴァルター・ベリー

放送用のモノラル音源である。ケルン放送なのでドイツ語歌唱なのであろう。これはこれで貴重な記録である。ハンス・ホップやヴァルター・ベリーが「カルメン」を歌っていたなんて全く想像もつかなかった・・・・
先日の1950年のオフィシャル録音はオペラ・コミーク版だったが、こちらはラジオの聴衆に馴染みのあるグランド・オペラ版である。
クリュイタンスは、1950年盤より若干遅めのテンポで重厚な演奏で、これはこれで悪くない。
歌手陣は主役のマラニウクはじめ間然するところがないが、個人的な文句を言うと、マラニウクは一流であるがアルト歌手である。そうなると例えば「ハバネラ」は低い音域になるとメゾの歌手は地声に変わるのだが、その変わり目に色気が出る、というか、そこがけっこう聴きどころなのである。しかしアルト歌手だと低い音域も裏声のままなのだ。そこが物足りないと言えば物足りないが贅沢な文句かもしれない。
音域の話をもう一つ。エスカミーリョはバリトンの役なのだが「闘牛士の歌」の再低音部はバリトンが出すのにはちょっとつらいぐらい低い。なので、今までどの録音を聴いても物足りなく、バス・バリトンに歌わせればいいのに、等と思っていた。今回のベリーは以前にも(確か)「ばらの騎士」で書いたが、バス歌手ながら高音がバリトン並みに出る。バス歌手なので勿論低い部分も余裕なので今回のエスカミーリョにはうってつけであった。
ちなみに予想外にドイツ語歌唱でも違和感がなかった。

クリュイタンスのビゼー「カルメン」

ビゼーカルメン
クリュイタンス指揮 パリ・オペラ・コミーク座管弦楽団&合唱団(1950)
カルメン/ソランジェ・ミッシェル
カエラ/マルタ・アンジェリシ
ドン・ホセ/ラウール・ジョバン
エスカミーリョ/ミシェル・ダンス

クリュイタンス・コレクションである。通常上演されるビゼーの死後に手を加えられたグランド・オペラ版ではなく、オリジナルのオペラ・コミーク版である(セリフがレチタティーヴォではないし、バレエも無い)

あまりに有名なオペラなので、ついつい忘れがちであるが、このオペラはフランス・オペラである。しかし、主役によって聴く録音を選んだりしていると、なかなかこの録音のような、指揮もフランス系、歌手もオール・フランス・キャストという録音にはお目にかかれないので、今回クリュイタンス・コレクションを買って非常に良かった。
ビゼー生前は失敗作と言われた「カルメン」が、グランド・オペラ化で世界的にポピュラーな人気作になったのは、全体に華やかになったせいもあるが、セリフのレチタティーヴォ化によって、フランス人以外の歌手が(楽譜通りに歌えばいいので)フランス語のイントネーションを気にする必要が無くなったために、世界的に上演される機会が増えた、というのも一因だという。
しかし、この自然なフランス語のセリフに満ちたオペラ・コミーク版も実に味わい深い。この形式はこれで残しておいてほしい。
クリュイタンスは正攻法の「カルメン」のお手本のような演奏。歌手陣はウィキペディアで取り上げられている程の当時の一流どころ揃い。突出した歌手はいないが必要かつ充分でバランスが取れている。モノラルなのは惜しいが、それは贅沢と言うものだろう。

クリュイタンスのフォーレ「レクイエム」モノラル録音

フォーレ「レクイエム」
クリュイタンス指揮 コロンビア管弦楽団(1950)
モーリス・デュリュフレ(オルガン)
マルタ・アンジェリシ(ソプラノ)
ルイ・ノグェラ(バリトン
サントゥスタシュ合唱団
以前にも書いたが、初めて聴いたフォーレの「レクイエム」はクリュイタンスのステレオ録音であった。
http://hakuasin.hatenablog.com/entry/2017/08/21/045817
http://hakuasin.hatenablog.com/entry/2017/06/30/042608
そして、上記で「いつかこの人も落ち着いてまとめて聴いてみたくなる」と書いているが、それがクリュイタンス・コレクションBOXを購入するきっかけだった気がする。
そして、モノラルBOXにステレオ録音の12年前のモノラル録音がある。
今回聴き比べのためにステレオ録音も聴いたのだが、音質の差はあるもののびっくりするほどステレオ録音と似ている演奏で、違いは音質とソロ歌手の違いだけのような気がする。そのソロ歌手であるが、ステレオ録音より素直な、より宗教音楽らしい歌い方なので、個人的にはこちらの方が好ましい。
ステレオ録音が無かったらこちらが名演と呼ばれたかもしれない。

 

娘のバンドがとうとうMVを!

 

クーベリックの ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

ワーグナーニュルンベルクのマイスタージンガー
ラファエル・クーベリック指揮 バイエルン放送交響楽団(1967)
ザックス:トマス・スチュワート
ヴァルター:シャーンドル・コーンヤ
エーファ(エヴァ):グンドゥラ・ヤノヴィッツ
マグダレーネ:ブリギッテ・ファスベンダー
ダーフィト:ゲアハルト・ウンガー
ポーグナー:フランツ・クラス
フォーゲルゲザング:ホルスト・ヴィルヘルム
ナハティガル:リヒャルト・コーゲル
ベックメッサー:トーマス・ヘムスレー
コートナー:キート・エンゲン
ツォルン:マンフレート・シュミット
アイスリンガー:フリードリッヒ・レンツ
モーザー:ペーター・バイレ
オルテル:アントン・ディアコフ
シュヴァルツ・カール・クリスティアン・コーン
フォルツ:ディーター・スレムベック
夜警:ライムント・グルムバッハ
テルツ少年合唱団 バイエルン放送合唱団

ヤノヴィッツである。ファスベンダーである。これが買わずにいられようか(笑)という事で、こちらも買ってしまう。
クーベリックらしい、伸びやかで、歌に寄り添うようなテンポの変化が心地よい、非常にロマンティックな名演。
若き日のヤノヴィッツは、若干可憐さが残り、数少ない貴重な娘役の記録である。第3幕の五重唱の初めのソロ部分の素晴らしい事!ほんとうにほれぼれする。
ファスベンダーはさらに若いが、もうすでに声が立派すぎてとても乳母には聴こえない(笑)が、ファンだから許す(劇爆)
多くの録音でダーフィトを歌うダーフィトのスペシャリストと言っていいウンガーは、さらに絶好調。
ザックスのスチュワートは悪役声でしっくりこない。さらに言えば今まで聴いた中で一番出来の悪い「ハロハロヘー」である。
逆にベックメッサーは声が素直過ぎて悪役に聴こえない(うなったりして悪役っぽく頑張ってはいるが)
コーンヤは声にヘルデンテノールとしての華やかさが足りない。

いろいろ文句は言っているが、クーベリックヤノヴィッツがあまりにいいので、これも愛聴盤になるんだろうな。

娘がギターを

昨日娘が、バンドの練習中にギタリストのギターを弾いてみたらしく、夕飯後に久々に「ギターを弾きたい」というのでしばらくアコギを貸した。
ファンである米津玄師さんの曲をつたないながらも弾き語りしたりしていた。知らないうちにけっこう弾けるようになっているものだ。
アルペジオってどうやるの」というので教えたり、「これを人前でやると「おおー!」ってなるぞ」と比較的すぐできるディープ・パープルの"burn!"「紫の炎」のギター・リフを教えたりした。(娘の世代ではタマホームとして誰もが知っている)
いつか娘とセッションできる日がくるといいなあ。

余談

かんかん照り」を一節弾き語りして「これ井上陽水」と言ったら、バンドのベースがカラオケでよく井上陽水を歌っているとか。話が合うかも(笑)

ライナーの ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

ワーグナーニュルンベルクのマイスタージンガー
フリッツ・ライナー指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団(1955)
パウル・シェフラー(Br:ザックス)
ゴットロープ・フリック(Bs:ポーグナー
エーリヒ・クンツ(Br:ベックメッサー
ハンス・バイラー(T:ヴァルター)
イルムガルト・ゼーフリート(S:エーファ)
マレイ・ディッキー(T:ダーヴィト)
ロゼッテ・アンダイ(Ms:マグダレーネ)
ベルハルト・ヴェヒター(Br:ナハティガル)

カラヤンバイロイト盤と並んで、クンツがベックメッサーを演ずるもう一つの録音のライナー盤を、我慢できずに買ってしまう。モノラルのライブ録音だが、音はめちゃめちゃ良い。
ライナーらしいきびきびしたテンポの中にも、テンポを落とすカタルシスもあり「トリスタンとイゾルデ」もそうだったが、ライナーはワーグナーを振る時はけっこう自由だ。そしてまたそれが抜群に面白い。こんなにテンポが速いのに、せわしない感じがまったくしないのはさすがにライナー。
歌手陣はクンツをはじめ名歌手揃いで出来もいい。声のふるえ癖というか、いつもは音程が不安定になるバイラーも今回は許容範囲である。
第2幕のクンツはやはり観客の笑い声が聴こえる。映像で名演技を見て見たかったなあ・・・・
ちなみに第3幕の「第1幕への前奏曲」の再現部分で観客から割れんばかりの拍手が起きるが、舞台上で何が起きていたのだろう・・・非常に気になる。