クリュイタンスのビゼー「カルメン」

ビゼーカルメン
クリュイタンス指揮 パリ・オペラ・コミーク座管弦楽団&合唱団(1950)
カルメン/ソランジェ・ミッシェル
カエラ/マルタ・アンジェリシ
ドン・ホセ/ラウール・ジョバン
エスカミーリョ/ミシェル・ダンス

クリュイタンス・コレクションである。通常上演されるビゼーの死後に手を加えられたグランド・オペラ版ではなく、オリジナルのオペラ・コミーク版である(セリフがレチタティーヴォではないし、バレエも無い)

あまりに有名なオペラなので、ついつい忘れがちであるが、このオペラはフランス・オペラである。しかし、主役によって聴く録音を選んだりしていると、なかなかこの録音のような、指揮もフランス系、歌手もオール・フランス・キャストという録音にはお目にかかれないので、今回クリュイタンス・コレクションを買って非常に良かった。
ビゼー生前は失敗作と言われた「カルメン」が、グランド・オペラ化で世界的にポピュラーな人気作になったのは、全体に華やかになったせいもあるが、セリフのレチタティーヴォ化によって、フランス人以外の歌手が(楽譜通りに歌えばいいので)フランス語のイントネーションを気にする必要が無くなったために、世界的に上演される機会が増えた、というのも一因だという。
しかし、この自然なフランス語のセリフに満ちたオペラ・コミーク版も実に味わい深い。この形式はこれで残しておいてほしい。
クリュイタンスは正攻法の「カルメン」のお手本のような演奏。歌手陣はウィキペディアで取り上げられている程の当時の一流どころ揃い。突出した歌手はいないが必要かつ充分でバランスが取れている。モノラルなのは惜しいが、それは贅沢と言うものだろう。