人形館の殺人(1989)

綾辻行人
さて、綾辻さんの「館シリーズ」文庫化されているものは一応読ませていただいた。あとは「霧越邸殺人事件」+αで、一段落つけようと思っている。さすがにどれも、トリックがすばらしかったが、だんだん犯人のあたりはつくようになってきた。で、あくまで個人的な好みを言うと、推理小説としては「変化球」であろうこの作品かもしれない。なんか、高橋克彦さんを思わせるところもあるし(綾辻さんは最近ホラー系に接近しているらしいし)瀬名秀明「BRAIN VALLEY」(1997)も、思い出したりした。
この「現実」と「脳内現実」の問題は興味がつきない。さらに「現実」さえも、どれだけ確かかという問題を書きつづけたのが「F・K・ディック」だが、天才的な芸術家は、どんなジャンルでも、究極はそこへの道をたどるのかも知れない。