写楽・ 考(2005)

北森鴻
そのタイトルから私が「蓮丈那智フィールドファイル」に触れるきっかけとなった第3作。シリーズは継続中らしいが、出版されているのはここまで。こういうジャンルは量産がきかないのは本人の言葉を待たなくても承知しているつもりだが、それでもこれで、しばらく新しいのが読めないのは寂しい。
蓮丈那智と内藤三國のコンビに、前作の最終作から加わった助手の佐江由美子、そして、本名と正体が明らかになった「教務担当の狐目」こと高杉、また、第1作に引き続き登場する「冬狐堂シリーズ」の主役宇佐美陶子、と、さながら蓮丈那智を中心点とした群像劇の様相を呈してきている(言い過ぎか)
民俗学的なアプローチもさらにパワーアップ、「湖底祀」の鳥居と神社の主客転倒説は、もう腰が抜けるほどうなってしまった(日本語になってない)おまけに当地青森に結びつける終結部は唖然とするばかり。現実の犯罪とのからみも、熟成の感あり。
肝心の「写楽・ 考」であるが、いつまでたっても写楽の写の字も出てこない。途中、まさか?と思うヒントがあったのである程度想像はついたが、最後の最後にドーンとつきつけられるこの「写楽」説は「写楽」という名前の成り立ちについても納得させられる、充分にインパクトがあるものだ。