ワーグナー「パルジファル」

クナッパーツブッシュ指揮 バイロイト祝祭管弦楽団(1964)
アンフォルタス:トーマス・スチュワート
ティトゥレル:ハインツ・ハーゲナウ
グルネマンツ:ハンス・ホッター
パルジファル:ジョン・ヴィッカース
クリングゾル:グスタフ・ナイトリンガー
クンドリー:バルブロ・エリクソン
1960年盤、1961年盤が入手しずらいので、この1964年盤で「パルジファル」も一段落。クナ最後の指揮である。
1963年盤も大概すごい事になっていたのだが、1964年盤もさらにすごい事になっている。
1964年のクナの演奏はよく、体力の衰えが感じられる、と評されるのだが、わたしはそう思ったことはない。
以前から巨大な、神か悪魔かの境地、と評してきたが、今回感じたのは、あまりに音楽が巨大になって、聴いている人間が、クナがその大きさを制御し切れていないかのように聴こえるのではないか、ということだ。
個人的には、あまりに巨大になって、現世にとどまり切れなくなった音楽が、異界へ旅立つのと同時に、クナも共にその世界へ旅立って行ったような気がする。つまりは、異世界へ移る直前の、ぎりぎりの音楽を、我々はクナの1964年の各演奏で聴く事ができるのだ。