幼き子らよ、我がもとへ(1995 邦訳:2007)

ピーター・トレメイン
「修道女フィデルマ・シリーズ」の邦訳第2弾(シリーズ第3作)である。
前回の「蜘蛛の巣」が、なぜ邦訳の第1弾になったかというと、たぶん当時のアイルランドの一地方を舞台にしているために、当時のアイルランドの社会の仕組みの紹介に丁度良い作品だったのだろう。この作品もその意味で、一地方の歴史問題や、当時の法廷の様子の紹介として第2弾に選ばれたのかもしれない。
フィデルマは修道女とは言え、盲目的にキリスト教の教義に従うわけではなく、納得できないものに対する考察や苦悩が素直に語られる。これが本来の宗教に対する態度であると思う。
「蜘蛛の巣」もそうだったが、偶然の僥倖に頼るなど、ミステリーとしての欠点はあるかもしれないが、物語の面白さ(というか興味深さ)はドロシー・L・セイヤーズに、犯人の意外さはアガサ・クリスティに匹敵するのではないか。
今回は結構ヘビーな内容だったが、これ以上にヘビーな作品も控えているらしい・・・