笑う大天使

遅まきながら、さるお方のお奨めの川原泉を読んでいる。今までこの人のことを知らなかったのは、私が「花とゆめ」を読まなくなってからの人だからだと思う。実にもったいないことをした。しかし、今、にわかファンだから客観的にいえることもある。
この作品が実写化されるということで、ファンの間では、このキャラは誰がやる?とか、このキャラをできる俳優さんはいるのか?などの話題になっているらしいが(決め付けですいません)残酷なことを言うようだが、そういう心配は一切要らないと思う。なぜなら!この作品の正編部だけを取り上げて、それを実写化するなら、単に「3人の美少女が、偶然身につけた超パワーで誘拐事件を解決!」という、いかにも映画向けの(特撮(死語)CG満載?)単純明快の分かりやすいストーリーになることは、目に見えている。よって、その他の部分は、原作どうりであろうがなかろうが、製作者側は一切気にしない事請け合いである。
ファンの方々は、続編3作を含めたものを「笑う大天使」として認識し、登場する各キャラに思い入れがあると言う事は、容易に想像できる。しかし、それは、続編にいたることで、よりふくらみと深みを増した「笑う大天使」の世界であって、仮に正編のみしかなく、これで実写化となると、私が言ったことも、あながちはずれてはいないと思うのだが、いかがだろう。
この続編のひとつ「オペラ座の怪人」には、新進オペラ歌手が登場する。たぶん(確実に)テノール歌手であろう。「魔笛」の絵で笛をもっている。つまり「タミーノ」なのでテノール。「ローエングリン」タイトルロールなのでテノール。ここらへん、ちゃんとつじつまが合っていることがうれしい。とかくマンガの中で、ロック、クラシック、ジャズ等が取り上げられると、作者が、さして音楽に詳しくも無かったりするので、いろんなアラが見えるものだ。昔はいちいち立腹していたが、いつのまにか慣れてしまった。(楽器の書き方がいい加減だったりね)だから、こういうことをきっちりやってくれると、逆にびっくりしてしまうのも、寂しい。さすが薀蓄漫画の第1人者(ってファンには、褒め言葉ではないな)たとえば水野英子の「ファイヤー!」名作なのは確かである。本当に!しかし、しかしである。音楽は、あんなふうには成り立たないのも、事実なので、楽器経験、バンド経験がある人間は、大変残念に思っていたのだった。
長くなっているが、最後に1点、「オペラ座の怪人」は、ファンタジーではない。こういう話を、川原さんは当たり前のこととして書いていると、私は信じる。私は、こういう事に気づいている作家を見抜くことができる。(たとえばディック等)つまりは、彼女も天才であろう。(何の事を書いているか、わかりずらいと思うが、分かる人は分かると思うのでご容赦)