チャイコフスキー「エフゲニー・オネーギン」の映像 その2

チャイコフスキー 歌劇「エフゲニー・オネーギン」
アンドリュー・デイヴィス指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1994)
グラインドボーン音楽祭)
タティアナ:エレーナ・プロキナ
エフゲニー・オネーギン:ヴォイテク・ドラボヴィツ
レンスキー:マーティン・トンプソン
オリガ:ルイーズ・ウィンター
ラーリナ夫人:イヴォンヌ・ミントン
グレーミン公爵:フロデ・オルステン
フィリピエヴナ:リュドミラ・フィラトワ

(長くなりそうだったので2回にわけました)
さて、通常恋愛がテーマのオペラは、テノールとソプラノが主役なのだが、オネーギンはバリトンである。そして、どうでもいい理由でしなくてもいい決闘でオネーギンが殺してしまう無二の親友レンスキーがテノールであり、彼のアリアが主役を差し置いて、名アリアとされている。
どういうことかと思ったら、チャイコフスキーの同性愛傾向がゆえだとか・・・・なんか納得。
そして結末は皮肉なものである。若き日のタティアナに「自分を抑える術を学びなさい」と説教をたれたオネーギンが、逆にタティアナに「自分を抑える術を学びなさい」と言われているようなものだからだ。
本当の恋を知らなかったオネーギンがその資格も無いのにタティアナに説教をたれ、本当の恋を知っているタティアナは、逆にその資格をもってオネーギンに説教するのである。
初めてこの曲に接するので比較するものがないのだが、アンドリュー・デイヴィスの堅実な音作りは、このオペラの繊細な美しさを充分表現していると思う。
演出も、背景の抽象性を多くして、登場人物の心情を前面に出す意図があると思われる。
歌手陣は、寡聞ながらイヴォンヌ・ミントン(歳を取ったなあ)しかしらないが、全体にレベルが高く、総括的に見て良質な映像ソフトだと思う。