偶然世界(1955)

フィリップ・K・ディック

さて、書籍編であるが、ディックは最初の頃はあまり気に入らなかった。問題作の「ヴァリス」以降を読んで、なるほどと思い、その思いで、それまでの作品を読むと、なんか納得できたので、後追いで、それまでも作品を集めだした。この作品は処女作で、中期以降のあまたの傑作群に比較して評価は低い。しかし、見逃せない部分も多々ある。ストーリーはうろ覚えで申し訳ないが、攻撃される側は襲撃者の精神を感知する事のできる超能力者に守られている。攻撃する側は、その裏をかくために、擬似生命体に、複数の刺客の精神を、順番に宿らせて、攻撃される側の包囲網を突破しようとする。ある刺客が、その擬似生命体から抜けて、本部(?)の自分の体に戻り、その瞬間、スクリーンに映し出される、今自分が抜けて、他の精神が宿った擬似生命体の映像を見るシーンは、映画的で大変スリリングであった。