嘘から出たまこと

ポストマン(1997)のような話を見ると思い出すのが春風亭柳昇新作落語「里帰り」である。ご存知の方もいるかもしれないが、以下そのストーリー。
里帰りした娘が父親に姑の愚痴を言う。本当に殺してやりたいほど憎いと言う。父親は、こう言う。そんなに憎いのなら俺も自分の娘がかわいい、ここにいい薬がある。殺した後が絶対に残らない毒薬だ。しかし、今殺してしまっては、あそこの家は嫁姑の仲が悪いと知れ渡っているから、必ずお前に疑いがかかる。だから1年我慢しろ。1年間姑に優しく尽くせ。そうしたら、もうお前を疑うものはいない。その時に毒薬を渡そう。それを聞いて娘は「お父さん、頭いいわねえ!」(ここで一笑い)そして1年経ってまた娘が里帰り。父が、どうだ、うまくいったか?今日こそ毒薬をやろう、というと、娘は、とんでもない、あんないい姑さんはいません!といって怒り出す。つまりは、嫁と姑を仲良くさせるための父親の策略であったという落ち。
私はこの話が大好きである。偽善も偽悪も良くないことは確かだが、ことばと行動は大切で、良い言葉を使い、良い行動をとってゆけば、自然に心が従っていくというのも事実である。そういう意味では偽善の方が(種類にもよるが)いい場合があるのかもしれない。
「ポストマン」についての余談だが、昔は気が付かなかったが、ザ・ハートブレイカーズトム・ペティがちょっとおいしい役で出ていた。この人もフーと一緒で、日本ではあまり知られていない気がする。
この映画、未だに酷評も目に付くが、ちょっと長すぎるという点を除けば駄作というほどの物ではなく、そこそこいい映画だと思う。