ウィルキー・コリンズ
しばらく読書感想が無かったとお気づきの方もおられるかと思うが(いないか)これを読んでいたのである。
いつか読もうと思って買ってあったのだが、今を逃すと読む機会は無いだろうと思って思い切って読み始めた。あまりの長さに尻込みしたのだが、思いのほかさくさく読める。考えてみればいくら長いといっても19世紀の作品がよみづらかったらヒットするはずも無いのであった。未だ推理小説と言うジャンルが確立する前の「推理を盛り込んだ通俗小説」なので、もしセイヤーズを読んでいなかったら、「なんじゃこりゃ」と思ったかもしれない。やはりちょうどいい時期に読んだのだ。以前「複数の人間がそれぞれの思惑で行動することにより謎が構築されのは彼女の常套手段」と書いたが、まさにそのネタ元であるし、キャラの立ち方もそう。セイヤーズが絶賛するのも、影響を受けたというのも良く分かる。また、ある方法による事件の再現について、疑問視する声が多いが、19世紀の読者が「そいうこともあるかしら」とワクワクすればその目的は達せられていたのだから、とやかく言う必要は無いのである。とにかく傑作である事は確か。
最近は本格物より、こういった、ストーリーやキャラが練りこまれた感じのほうが自分にフィットするな。(年か?)
同じ作者の別の作品が読みたいと思ったが、もう一つの長編「白衣の女」は絶版中。