ドロシー・ギルマン
ミセス・ポリファックス・シリーズ「〜サファリ・スパイ」(1976)と「〜シルクロード」(1983)の間に書かれた、ギルマンのノン・シリーズである。
対人恐怖症が回復しつつある主人公が、遺産で手に入れた店で見つけたハーディ・ガーディ(実はハンド・オルガン)に謎にメッセージがはさまっていた・・・・
対人恐怖症からの回復のきっかけが、インド人修行者の言葉であった事からわかるとおり、これも一種ニューエイジ的啓蒙書の一面があるが、基本はかなり骨太なサスペンス・ミステリー。謎の探求の旅と主人公の自己発見、魂の成長の旅が絶妙に絡みあう。ラストはかなり感動的。一人称で語られるのもギルマンにしては珍しい。
偶然が多すぎて一種のファンタジーと評する人もいるが、個人的にはシンクロニシティを意識的に導入したと思いたい。
どうも、世間とは逆の意見だが、ギルマンはポリファックス・シリーズ以外のほうが私にはしっくりくるなあ。