第九軍団のワシ(1954)

ローズマリー・サトクリフ
やっとのことで、ローマン・ブリテンの第1作目を読む。
女王ブーディカの乱(乱って使いたくないけど)から60年後のブリテンに、ローマ軍の若き百人(大)隊長のマーカスが赴任する。彼の父のひきいる第九軍団は、かつてカレドニア(スコットランド)へ北進したまま、忽然と姿を消していた。
以前にも書いたが、ローマ人が主人公と言う事で、この作品はけっこう敬遠していたのだが、ローマ人が異郷であるケルトに触れ、そして同化してゆき、子孫がローマン・ブリテンとしてのアイデンティティを持つようになる、というこのシリーズは、サトクリフが読者にしかけた、うまい仕掛けだと思うようになった。
つまりは、読者もケルトという異世界に触れ、同化してゆき、こんどはケルトとしての物の見方で、シリーズを読み進めるようになる、というわけだ。
外面的なテーマは、失われた第九軍団と、その象徴の「ワシ」の探索と奪還、そしてピクト族の風俗との出会いなので、外面的な面白さは抜群で、シリーズに引き込むための第1作としての役割を充分果たしている。

「ワシ」の元ネタになったレディング博物館の「ワシ」
ttp://homepage3.nifty.com/pond_2/England/England05/main.html
レディング博物館のサイト
ttp://www.readingmuseum.org.uk/news/2011/feb/visit-reading-museum-famous-roman-eagle/