篠田真由美「魔道師と邪神の街 魔都トリノ」

篠田真由美「魔道師と邪神の街 魔都トリノ
「龍の黙示録」第7弾「イタリア三部作」の第二作であるが、前作が一つの話の終わり、という雰囲気でもなく、登場人物がほとんどそのままなので、「イタリア三部作」という名の大きな長編と見ることができる。なんとなれば、第5作をインテルメッツォとした、第4作からの大きな長編と捉えてもいい。
以前、第3作では主人公は狂言回し、と書いたが、シリーズが進むにつれ、結局人間の内面を語るのがこのシリーズの醍醐味になってきている(表向きは陰謀だったりアクションだったりするが)そうなると非人間である主人公はどうしても狂言回しとなり、例の元の敵役が重要になってくる。
作者は「うれしい誤算」と書いていたが、彼がいなかったらこのシリーズはまったく別の展開になっていたのかもしれない。
あと、特筆すべきは作者の構成力で、以前からその傾向はあったが、複数の(それもかなりの数の)シーンが同時進行して収束しゆく様は圧巻である。