ミッシェル・ポルナレフ「熱狂のオランピア」「ポルナレフ・ア・トーキョー」

ミッシェル・ポルナレフ
「熱狂のオランピア」1972 10/6~10/22
ポルナレフ・ア・トーキョー」1972 11/20

共に1972年のライブで「ア・トーキョー」は日本でのみの発売、直後にほぼ同一のラインナップの「熱狂のオランピア」がフランスから出てしまったので、日本ではしょうがなく発売時期を1年づらした、という経緯がある。ちなみに「ア・トーキョー」は初CD化。
何かで耳にしていたはずだが、ちゃんと聴くのは今回が初めて。
オランピア」は客席にマイクを置いたそうで、かなり音は生々しい。「ア・トーキョー」のほうがすっきりしている。ちなみに「オランピア」ではストリングスと女性コーラス隊がいる。
しかし、双方ともよく言えばライブならではの迫力、悪く言えば荒っぽい演奏。この時期の曲は完成度が高いので、音だけで聴く分にはわざわざ荒っぽいライブの演奏に価値があるか、というとちょっと微妙。(もちろんその場にいたら感動するにきまっているが)
たぶん、ここら辺の印象で、当時はポルナレフのライブを買わなかったのだろう、と思い出してきた。
それでも、演奏中にわざわざ通訳を介して日本の聴衆に演奏の喜びを伝えるほど、日本でのライブを気に入ってくれたのは素直に嬉しい。

ポルナレフの初期ライブ

ポルナレフBOXの売りである初出音源の最初は、初期のライブ音源で
ローザンヌ・パレ・ド・ボーリュー劇場 1967/4/6
パリ・オランピア劇場 1967/10/8
の2種類が収録されている。
大昔、ポルナレフのライブと言えば、なんかバックバンドのレベルが低かったような印象があって、あまり期待せずに聴いたのだが、この、たぶんサングラスをする前のライブのなんとアグレッシブな事よ!スタジオ録音より抜群に面白いではないか!!これは認識を改めねば。

ポルナレフBOX 日本盤アルバム(CD)未収録曲(と「おかしなジョー」)

今回、「ポルナレフ革命」以前の日本盤のアルバム(CD)に未収録の曲がたっぷり聴ける、と書いたが、それは以下のとおり。

いとしのヴェロニック
ビートニク
侮辱
哀れなギタリストの告白
ミカエルへの哀歌
ファット・マダム
男は涙を流さない
ミス・ブルー・ジーンズ
失われたマント
ショー・ビジネス候補生
愛の別離
リンガディン
悲しきマリー
夜行列車(今夜の列車)
アベク・ニニ
つけぼくろ
天国への道
ジョブ

未収録なのになぜ邦題がついている?と個人的にも思ったのだが、シングルやEPとして発売されたり、1974年に「ポルナコレクション」という日本編集盤に収録されていたり、トリビュート・アルバムに収録された際に邦題がついたりしていたようだ。

今回のBOXの前に、日本盤CDで復習していたので、上記の曲のみを聴いた。
「悲しきマリー」は、さすがに聴いたことがあったし「ジョブ」は前にも書いたが「忘れじのグローリア」のB面で聴いていたが、他はすべて初めて聴いた。ヒット曲とは比較にならないけれど、他のアルバムの収録曲と比べてもなんら遜色はなかったので、今回これだけでもうれしい。

今回上記の「ポルナコレクション」の存在を初めて知ったのだが、そこに収録されている
「おかしなジョー」"L'affreux Jojo"がBOXに収録されていない。
どうも、昔からどのCDにも収録されていないようで、今回のBOXでも唯一の未収録曲のようだ。BOXのブックレットにはシングル、EP、アルバムのジャケット写真の下に収録曲が載っているが、「おかしなジョー」が収録されているEPの写真には、ちゃんと4曲の曲名が載っているのに、その下の曲が3曲しか載っていないので意図的に未収録なのだろう。これは、以前からファンの間では謎らしいが、ポルナレフらしいちょっといっちゃってる歌詞がCD収録に向かない、という可能性はある。

(追記:海外の歌詞検索サイトでも、作者の意向により未掲載、みたいな扱いになっていた。"L'affreux"は直訳すると「醜い」だから、差別的とされているのかもしれない)
それでも、今ではようつべで聴けるのだから、いい時代になったものだ。
ちなみに、あるサイトでこの曲を変拍子と書いてあったが、一瞬間違えそうだが、普通に3拍子である。

youtu.be

ポルナレフあれこれ

ポルナレフ・BOXが届いた。ブツを見て我が家では口々に「本じゃん!」
横長A4サイズで厚さ3.5cmの堂々たる本である。
それはさておき、BOXに挑戦する前に、久々にポルナレフのドキュメンタリー・DVDを見た。フランスで1972年1月にテレビ放映された、インタビューの合間にライブ映像が差し込まれる番組である。
まあ、当時のフランスのテレビ側が、どれだけ髪の長いロック・スターに偏見があるか、というのがよくわかる作りにはなっているが、いろいろと興味深い。
私は、ポルナレフはロマンティックな甘いイメージの陰に、実はとんでもない革新的な要素がひそんでいると思っている。
かの「シェリーに口づけ」でも、実はあの曲の肝は、対位法的なバックコーラスが絡むところだと思っているし「バラ色の心」のメロディなぞ、ポップスの範疇を超えていると思っている。
で、この番組のインタビューで、信じてもらえないかもしれないが、実は「バラ色の心」のメロディは、ある朝聞こえてきた鳥のさえずりが元になっている、と語っていた。鳥のさえずりに心をとめる、そのセンスがやはりすごいのだな。
あと、今更ながらにいろいろと調べていて思ったのが、フランスと日本のポルナレフに対する感性の違いだ。

ウィキペディアによると、

1970年
7月、「僕は男なんだよ」がフランスで大ヒット。B面は「忘れじのグローリア」。

とある。
「僕は男なんだよ」が悪いとは言わないが「忘れじのグローリア」をB面においやって、しかも大ヒットする、というのが、個人的には理解に苦しむ。前に書いたが「忘れじのグローリア」が人気があるのが日本だけ、というのがこういうところなんだろうな。
まあ、上記のDVDでインタビュアーが(髪が長い イコール ゲイという観点から)しつこく「ゲイではないんですね」と念押ししていて、そういう世間に対するアンサー・ソング的にこの曲を発表した、という経緯があり、それがヒットの原因なのかもしれない。

あの曲が実は・・・

これから書くことは、今回のポルナレフ・BOXを知る前に思いついたので、まったくの偶然なのだが、シンクロニシティかもしれない。
西城秀樹が亡くなった後、テレビで「傷だらけのローラ」が流れているのを見て「あれ?ポルナレフの「忘れじのグローリア」に似てるんじゃね?」と思った。
パクリまでいかなくても、構成というかコンセプトは下敷きにしているんではないだろうか。
で、今回ポルナレフ・BOXも買ったことだし、気づいた、ということをブログに載せようと思ったが、他の人も気づいているだろうか、と思って検索してみたらけっこう有名な話らしい(汗)
しかし、両方とも40年以上前から知っている曲なのに、当時はまったく気が付かなかったなあ。

今回のポルナレフ・BOXと私のポルナレフ歴

ポルナレフ・BOXが届くまで、つらつらと思い出話を。

私がミッシェル・ポルナレフを初めて聴いたのはたぶん中学校の頃で、当時ヒットしていた「忘れじのグローリア」をラジオで聴いてシングル・レコードを買ったと思う。(B面は「ジョブ」)(ちなみに最近知ったのだが、「忘れじのグローリア」は日本でのみ人気があるらしい。大ショック。ポルナレフの中で一番好きな曲かもしれないのに)
当時の明星や平凡の付録の歌本には「愛の休日」や「シェリーに口づけ」も載っていたはずだ。
少ない小遣いの中で、当時一番コスパが良かったのがCBS・ソニーが扱っていたミュージシャンのベストを勝手に編集して販売していた「ゴールド・ディスク・シリーズ」で、これがあれば、当時出ていた4枚のアルバムを買ったのと同じくらい充実していた。
収録曲は以下の通り。

SIDE:A
1 愛の休日
2 愛のコレクション
3 ロミオとジュリエットのように
4 忘れじのグローリア
5 愛の物語
6 コンピューターの夢
7 哀しみの終わるとき

SIDE:B
1 渚の想い出
2 ギリシャにいるジョルジナへ
3 愛の願い
4 君との愛がすべて
5 ノン・ノン人形
6 バラ色の心
7 シェリーに口づけ

お気づきのかたもおられるだろうが「ラーズ家の舞踏会」が無い。
この曲はNHKでのスタジオ・ライブ(口パク?)では耳にしていたので、悔しかったが、この1曲のためにアルバムを買う余裕は当時無かった。
そして、例の「ポルナレフ革命」である。
実はアナログ時代の購入したポルナレフはこれで全てであった。東京のライブも、オランピアのライブも買ってない。アメリカ移住後も買ってない。この後、ビートルズ、ハードロック、そしてプログレに耽溺して、ポルナレフからはもう離れてしまった。

CD時代になって、ポルナレフのCD化が進まない頃に、あやしいベスト盤をワゴンで見つけて買った。たぶん、アナログからそのままCD化したもので、後に出たCDに比べて音質は劣るが当時はこれしかなかったから重宝した。(ちなみに、輸入盤でありながら日本でのみ発売されたらしい。つまり、日本で発売するためにのみ海外で制作されたということ。これも凄いな)
収録曲は以下のとおり。

Polnareff Collection Of Masterpieces

シェリーに口づけ
愛の願い
渚の想い出
哀しみの終わるとき
愛のコレクション
想い出のシンフォニー
忘れじのグローリア
ノンノン人形
ラーズ家の舞踏会
ステキなランデブー
夜の鳥と一緒に
君は友達
人生は星の流れ
愛の証を
恋は人生の想い出
ギリシャにいるジョルジナへ
バラ色の心
君の幸福と僕の悔恨
恋人に捧ぐバラッド
愛の休日

そう、これでやっと「ラーズ家の舞踏会」をちゃんと聴けた事になる。

その後は、初期の4枚の日本盤が発売されたので購入。例の「ポルナレフ革命」も海外盤で入手した。これがCD後のポルナレフ購入のすべてである。

よって、たぶん今ではいろいろ出ているCDやライブを持っている人と私とでは、このBOXの価値がだいぶ違うと思う。

私にとってのこのBOXの価値は(前回も少し書いたが)
1.初期の4枚のアルバムに未収録だったシングル&EPの曲が聴けること。
2.「哀しみの終わるとき」「大乱戦」「三銃士」「リップスティック」「羽根の生えた蛇の逆襲」のサウンド・トラックが聴けること。
3.「ポルナレフUSA」以降のアルバムが聴けること。
4.未発表を含むライブ(なんと8公演)が聴けること。
5.各国でのリリースの為にセルフカバーした、英語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語による録音が聴けること。
6.1980年にミシェル・コロンビエと作曲と共同プロデュースを担当した幻の録音"Menage A Trois"が聴けること

 

ミッシェル・ポルナレフのBOX(と「ポルナレフ革命」の話、再び)

Michel Polnareff - Pop rock en stock
ミッシェル・ポルナレフのBOX(23CD)が昨年末に発売されていることを知らなかった!慌てて注文。海外サイトで収録曲を確認した。
アメリカ移住後のアルバムは買ってなかったし、未発表を含むライブもうれしい。
初期のアルバムに未収録のシングル&EP曲がこんなにあったのか!というのもうれしい喜び。私が最初に買ったシングル「忘れじのグローリア」のB面曲「ジョブ」もある!
また、ポルナレフが作曲したものすべて、という方針なのだろうが、音楽を担当したすべての映画のサントラ、そして、作曲とプロデュースを担当しながら陽の目を見なかったアルバムも収録してある。これはすごい。

しかし、である。以前にも書いたが
http://hakuasin.hatenablog.com/entry/20060527/p1

ポルナレフ革命」の日本盤がなんとかCD化されないものかなあ。
あくまで個人的な推測を、上記で書いたことに追加するが、それまでのシングルやEP曲の寄せ集めではない、記念すべき初のオリジナル・アルバムの「ポルナレフ革命」の発売を、当時ポルナレフの人気が絶頂だった日本のレコード会社は首を長くして待っていたに違いない。しかし、なかなか発売されない。マスター・テープはすでにあるらしい。ならば、なんとかそれを手に入れて、日本側でミックスして1秒でも早く発売できないだろうか・・・・・そんな裏事情があったと、勝手に推測する。それが、ポルナレフに無許可で行われたのか、許可はしたが渋々だったのか・・・とにかくこのアルバムはずっと鬼っ子のような扱いをうけてきた。捨て曲がほとんどない名作なのに!!!!
そして、本人が望んだ方向かどうかわからないが、海外で1年後に発売された「ポルナレフ革命」と同じマスターテープから作成された"Polnareve"は、上記で書いたように個人的には「ポルナレフ革命」より出来が悪い。
日本盤「ポルナレフ革命」のCD化、なんとかならんかなあ、ポルナレフが生きている間は許可が出ないんだろうなあ・・・・
私はアナログを所有しているから、聴こうと思えば聴けるのだけれど、これを聴いたことが無い人に是非聴いてほしいんだがなあ・・・・