まっ白な嘘

フレドリック・ブラウン
フレドリック・ブラウンは、その豊かな発想と洒落たストーリーで数々のSFの傑作(特に短編、ショートショート)がある。子供の頃は、この人と(作風は違うが)レイ・ブラッドベリの短編をよく読んだものだが、同年代のSFファンも、けっこう同じだったのではないか。(あと、まだ若い頃の筒井康隆、そういえば彼の短編の中で「フレドリック式ブラウン管」という言葉をみつけて、にやにやした覚えがある)彼は本来はサスペンスの作家で、この短編集はそっちのジャンルである。が、買ったときは、ブラウンの名前だけで勝手にSFと思い込み、読み終わってから、なんかSFっぽくないなあ、等と思ってよく見返したら創元推理文庫のサスペンスジャンルのマークがついていて、びっくりした思い出がある。ただし、抜群に面白かったのは事実で、粒ぞろいの傑作で埋まっている。彼のSFの短編集は、取捨選択したくなるときがあるが、こっちは、この1冊で、ベストであろう。特に最後の作品は、小森健太朗あたりで一般的になってきた「メタ小説」の元祖的な作品で、ネタばれになるので内容は書かないが、これがアメリカで初版の時、予備知識も無く読んだ人の何人かは、まさかとは思いながらも、きっと後ろを振り返ったり、部屋の中を見回したのではないだろうか。