まだ人間じゃない

(ディック傑作集4「まだ人間じゃない」収録)
フィリップ・K・ディック
最近ある女性作家が「避妊手術も、生まれてすぐの子猫を殺すことも同じことだ」との趣旨で野良猫対策として自分の猫の生んだ子猫を殺したという話がネットで話題のようだ。特にそれについて述べるつもりは無いが、ディックのこの作品を思い出した。
ディックの作品は不快感が伴うものが多い。それはとりもなおさず彼が我々に問題意識を突きつけているからに他ならない。この作品は12歳未満を「生後堕胎」として合法的に殺せる世界を描き、この作品が不快だって?じゃあどこからが人間なの?人工中絶される子供は人間じゃないの?と語っている作品である。(案の定発表当時はかなり論議を呼んだらしい)
何が言いたいかというと、この女性作家の言うことも理屈が通っているようにも聴こえるが、極論として、人口問題とかなんやかんやの理屈をつけて「人工中絶も、生まれてすぐの子供を殺すことも同じことだ」などと言う理屈につながりかねないのでは・・・と危惧しているという事である。