モンゴメリ「可愛いエミリー」(と自分話)

モンゴメリ「可愛いエミリー」
前にも書いたかもしれないが、モンゴメリの「エミリー・シリーズ」を今まで読まなかったのは「自伝的要素が強い」という前評判だったからだ。他の作家なら気にならないが、なぜか作品の奥にモンゴメリ自身の生々しさが透けて見えるのがいやだった。つまりは、いろいろと彼女の人生のどろどろした部分も知ってしまったから、きらきらした作品でだけ、彼女を楽しみたい、という潜在意識が働いたのかもしれない。
案の定(モンゴメリ自身もそうだったであろう)主人公の周りは、俗世間の醜さや、女性と文学の組み合わせに対するかたくなな無理解にあふれていて、読んでいて感情移入より先に不快感の方が先に来て、序盤はかなり読むのがつらかった。
しかし、後半の主人公の成長の描写にはかなり深いものがあるし、ケルト的オカルティズムの雰囲気もある。ある意味、子供よりも大人が読むべき小説かもしれない。
ちなみに、モンゴメリもそうであったろうが、主人公の「物を書きたい」衝動に対する周囲の無理解、というのは個人的にも非常に良くわかる。
私も随分「音楽をすることは、好き勝手な事をしている」と思われていたものだ。本人はまったく「好き勝手な事をしている」わけではないのである。やむにやまれぬ衝動でやっているのである。しかし、それを理解してくれる人は親を始め一人もいなかった。この本を読んで、その切なさを改めて思い出した。せめて、娘にはこんな思いを味あわせたくないものだ。

ちなみに例の曽曽祖父の話は
http://hakuasin.hatenablog.com/entries/2015/05/18
こちらで利用されていた。