クリフォード・D・シマック「人狼原理」(1967)
この作品は「都市」(1952)や「中継ステーション」(1963)より後の作品であるが、内容的には「再生の時」(1951)に近い内容を持っている。
両作品ともアンドロイド(ロボット系ではなく、人造人間つまり、フィリップ・K・ディックにおけるレプリカント)が登場し、それが深遠なテーマにからんでくる。
牧歌的とよく言われるシマックであるが、実は深刻なSFを書く作家であり、問題提起力はフィリップ・K・ディックに劣らない気がする。
「都市」という作品も、テーマは深刻なのだが、それを連作短編の形式でオブラートに包んでいる感がある。そして、それだからこそ人口に膾炙する作品となっていることは事実なのだが、同時にSF作家として誤解されている面もあるかもしれない。
もし、シマックの何らかの作品が、ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」(1968)(映画化:ブレードランナー)より前に映画化されるとかしたら、もっと注目されて邦訳も増えたかもしれない。
未訳の作品の邦訳は、もう望めないのかもしれないが、なんとかならんもんかな。