ワーグナー「さまよえるオランダ人」

クナッパーツブッシュ指揮 バイロイト祝祭管弦楽団(1955)
というわけで、クナの「さまよえるオランダ人」を聴く。
先日、このオペラはワーグナーにしてはコンパクト(2時間強)だと書いたが、クナは2時間半強かけて振る。
序曲からずっと、音楽はうねりっぱなし。「ゼンタのバラード」ではお得意のリタルダンドがカタルシスを起こす。
主役はヘルマン・ウーデ、アストリッド・ヴァルナイ、脇にヴォルフガング・ヴィントガッセン、ルートヴィヒ・ ヴェーバーという贅沢な布陣(ただし、ヴェーバーはやや不調)
DVDを見た後は、何枚か揃える気になっていたのだが、このクナの演奏を聴いてしまうと、なんかこれ以降どの盤を聴いても物足りなく感じそうなのでやめることにした。
ちなみに、先日書いたように、こちらは「救済」で終わる通常の版(つまり修正版)である。
個人的感情としては「救済」がいいと思うのだが、既に指摘されているとおり修正版は「指環」作曲後に「救済の音楽」付け加えられているために、それまでの作曲技法と差があるので、実際に聴いてみると、突然「神々の黄昏」みたいになってしまって、つながりはあまりよくないのは事実。
ちなみに、以前から太い(声がね)ソプラノは苦手だと書いてきたが、ヴァルナイは先輩のフラグスタートや同年代のニルソンより声質がやわらかく、だんだん好きになってきた。声質としてはメゾに近いと思っていたら、やはり晩年はメゾに転向したそうだ。(そうそう「神々の黄昏」のヴァルナイのブリュンヒルデと妹のワルトラウテの対話のシーン、ワルトラウテがアルトのはずなのに、油断するとワルトラウテがソプラノ、ブリュンヒルデがアルトに聴こえてしまうときがあった)