蜘蛛の巣(1997 邦訳:2006)

ピーター・トレメイン
「修道女フィデルマ・シリーズ」の邦訳第1弾(シリーズ第5作)である。
本来「修道女フィデルマ・シリーズ」を読むために、トレメインの最初の邦訳「アイルランド幻想」(こちら)を読んだはずなのに、読んだら他の怪奇・幻想小説を読みたくなって、いろいろアンソロジーを読んでしまって、随分遠回りしたものだ。
7世紀のアイルランドが舞台ということで、とっつきにくいかと思ったが、読んでみるとさくさく読めて安心した。
内容はミステリーなので詳しくは書けないが、アイルランド教会とローマ教会の対立は興味深い。ローマ教会は徹底してアンチ・ケルトとしてブリテン島を席巻したが、アイルランドではドルイドが主導して、ケルト文化を残したままキリスト教化が行われた(そもそも、アイルランドにキリスト教を伝えたパトリキウス(聖パトリック)はウェールズのケルト人)
ローマ教会側とフィデルマの論争を見ると、フィデルマ側にはグノーシス派の香りもする。そういう意味も含めて、こちらの方が本来のイエスの教えに近い気がする。
読む前は「修道女?キリスト教じゃないか、アンチ・ケルトじゃないか」という危惧もあったのだが、これなら安心(笑)ドルイドの末裔も登場するぞ。ケルト系好きは必読!