クリュイタンス・コレクションのワーグナー

クリュイタンス・コレクションのワーグナー
いよいよクリュイタンス・コレクションのオペラを聴くわけだが、やはりワーグナーから始めたい。
以前も書いたが、クリュイタンスはフランス系指揮者として初めてバイロイトに登場した。
バイロイトにおけるクリュイタンスの足跡は以下のとおり(かっこ内は同曲で指揮をわけあった指揮者)

1.1955年「タンホイザー」(カイルベルト
2.1956年「ニュルンベルグマイスタージンガー
3.1957年「パルジファル」(クナッパーツブッシュ
4.1957年「ニュルンベルグマイスタージンガー
5.1958年「ニュルンベルグマイスタージンガー
6.1958年「ローエングリン
7.1965年「パルジファル
8.1965年「タンホイザー

クリュイタンス・コレクションには上記のうち、2.4.5.のすべての「ニュルンベルグマイスタージンガーバイロイト初登場の1.「タンホイザー」そして6.「ローエングリン」が収録されている。
それに加え、ミラノ・スカラ座の「パルジファル」(1960)ウィーン国立歌劇場の「トリスタンとイゾルデ」(1956)が収録されている。
以前、ヴィーラント・ワーグナーがクリュイタンスのワーグナーを「エレガント」と絶賛した話を書いたが、エレガントなワーグナーと言えばヴィーラントがクナッパーツブッシュの後釜と考えていたものの、急逝により1953年の「指環」だけが残ったクレメンス・クラウスを思い出す。もしかしたらヴィーラントはクラウスに求めていた物をクリュイタンスに求めたのかもしれない。だったら「指環」も振らせればよかったではないか!
クリュイタンスの「指環」は無いのかと調べたら、ミラノ・スカラ座で振っているようだ。正式録音ではなさそうだが「ジークフリート」(1963)が海外のサイトで売られていた。なんとか全曲盤が正式発売されないものだろうか。
というわけで、手始めは「タンホイザー」「ローエングリン」あたりかな。

クリュイタンスのリスト「前奏曲」

リスト 交響詩前奏曲
クリュイタンス指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1960)
この演奏はびっくり、こんなにゆったりとして柔らかく抒情性のあるリストの「前奏曲」は初めて聴いた。標準盤としては推せないが一聴の価値あり。
ちなみに、クリュイタンス・コレクションではワーグナーとは別のCDに収録されているが、単独のステレオのワーグナー管弦楽曲集に併録されているバージョンがある。ので購入の際は、よく確認されることを請う。

クリュイタンスのワーグナー管弦楽曲(モノラル)

ワーグナー
ジークフリートの牧歌」
ジークフリート」より森のささやき
「神々の黄昏」よりジークフリートのラインへの旅
「神々の黄昏」より葬送行進曲
クリュイタンス指揮 パリ・オペラ座管弦楽団(1958)
クリュイタンス・コレクション(モノラル)である。先日のワーグナーのステレオが前奏曲、序曲だったのに対して、こちらは「ニーベルングの指輪」関連である。「ジークフリートの牧歌」は厳密に言うと「指環」の曲ではない。どうも、ジークフリートの生涯をテーマにした選曲らしい。
演奏は、クナッパーツブッシュばりのうねりとフルトヴェングラーばりのテンポ変化が同居し、かつ明るく豊かな色彩に溢れている、というとんでもない演奏である。昨日の管弦楽もそうだったが、こんなワーグナーは聴いた事がなかった。これはオペラも楽しみだ。
しかし、音は抜群にいいのだが、昨日のワーグナー管弦楽(ステレオ)のたった1年前、かつ1958年なのに、なんでモノラルなんだろう。

クリュイタンスのワーグナー管弦楽曲(ステレオ)

ワーグナー
ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
ローエングリン」第1幕への前奏曲
ローエングリン」第3幕への前奏曲
さまよえるオランダ人」序曲
タンホイザー」序曲
クリュイタンス指揮 パリ・オペラ座管弦楽団(1959)
クリュイタンス・コレクションである。いきなりオペラを聴く前に、ウォーミングアップとしてワーグナー管弦楽曲を聴いてみることにした。
ちなみに、モノラルでもワーグナー管弦楽曲があるが、そちらは「ニーベルングの指輪」関連である。
マイスタージンガーは冒頭のみのっそり始まるが、自然なアッチェレランドがかかっていて、いつの間にか快速演奏になっている。他の曲もそうだが、イタリア人のトスカニーニカンタービレワーグナーが新鮮だったように、精緻であるが明るい抒情性のあるクリュイタンスのワーグナーも実に新鮮だ。
ヴィーラント・ワーグナーがクリュイタンスのワーグナー
「エレガントにして清澄、ニュアンスと色彩に満ちた品位あふれるもの」
と、絶賛したそうだがむべなるかな。

ロスバウドのブルックナー 交響曲第7番

ブルックナー 交響曲第7番
ロスバウト指揮 バーデン・バーデン南西ドイツ放送交響楽団(1957)
ホルライザーの「ロマンティック」のカップリング第2弾である。
http://hakuasin.hatenablog.com/entry/2016/11/17/045011
こちらもCDには録音年が記載されていないが、ネット情報から1957年のステレオ録音である事が判明。
ロスバウトは、寡聞にして知らなかったが現代音楽の指揮者として著名だったがバーデン・バーデン南西ドイツ放送交響楽団(バーデン・バーデン・フライブルクSWR交響楽団)主席指揮者時代の放送用音源が高評価を受けているらしい。
さて、一聴してびっくり、マタチッチ、シューリヒト、朝比奈隆等と比しても遜色ない名演である。
スケルツォ以外は全体として速めのテンポだが、ところどことブロックとして遅い。リタルダンドやアッチェレランドを使用していないので全体としてインテンポとしていいだろう。ブルックナーの抒情性や寂寥感は、インテンポでこそ生きる、という見本のような演奏である。唯一遅いスケルツォも新たな魅力として聴ける。
ロスバウドはブルックナーの2番から9番まで録音が残っているが、7番以外は放送用のモノラル録音なので、7番がステレオで残っている事はブルックナー・ファンにとっても幸福なことだといえる。
今回の、ホルライザー、"Hubert Reichert"、ロスバウトによるブルックナー3CDセットは、思わぬ拾い物、お宝発見であった。

Hubert Reichertのブルックナー 交響曲第6番

ブルックナー 交響曲第6番
Hubert Reichert指揮 Westfalisches Sinfonieorchester
ブルックナー「ロマンティック」のはしごをしていたら、ホルライザーの「ロマンティック」のカップリングをまだ聴いていないことを思い出した。
http://hakuasin.hatenablog.com/entry/2016/11/17/045011
Hubert Reichertという指揮者については、本当に情報が無く、この録音も(ステレオではあるが)何年の録音かもわからない。なので、あまり期待しないで聴いたのだがこれがうれしい誤算だった。
ホルライザーのように「余計な外面的な効果を狙わない、大変素朴で真摯な演奏」でいながら、この曲の欠点をうまくカバーしている。こんなところにブル6の名盤が眠っていたとは!
この人はブルックナーの第2番の録音もあり、評判がいいのだが入手しづらい状況のようだ。っていうか、他の交響曲も録音してくれればよかったのに!