「富豪刑事」と筒井康隆

さて「富豪刑事」であるが、当時、筒井さんは、表現技術については一種のピークを迎えていたような気がする。(「虚人たち」あたりで、新たな高みを目指し始めたか?)それほど「富豪刑事」は見事だ。1作目、何の説明もなしに、時間、場面を飛ばしてセリフだけでつなげていくやり方。クライマックスのパーティシーンでそれが畳み掛けられるところは圧巻。また、3作目の構築の仕方もほれぼれする。ドラマでは、ねがわくば4作目をなるたけ豪華に再現して欲しいものだか・・・・
ちなみに(1)「宇宙衞生博覽会」で、感情移入の激しいわたしは、読んですっかり落ち込んで、筒井康隆からしばらく離れる決心をし、それ以降の作品はあまり読んでない
ちなみに(2)これは、たぶん誰も言ったことが無いと思うが、「虚人たち」は、「作者」「登場人物」「読者」この三者の視点を、つねにシャッフルする手法で書かれていると、当時から思っていた。分かりやすく言うと、登場人物が失神するシーンで空白の数ページが挿入されるが、これは失神という事象が「作者」もしくは「読者」にスライドしているわけである。今手元に無いので、他の分析はできないが、確か、この考え方ですべて読み解けるはずだ。当時から「難解な作品だ」とか「フリージャズの小説版」などと言われていたが、なんでみんな気がつかないのか、といぶかしく思っていた。ただし、すべて私の思い込みですので、突っ込まないこと。