モーリス・ルブラン「リュパンの冒険(アルセーヌ・ルパン)」
この作品は、ルブラン自身による(共作)舞台版「アルセーヌ・ルパン」の台本(仏文)の、さらにルブラン自身による(別人との共作)小説化(英文)である。
なので、食指が動かなかったのだが、読んでみるとことのほか面白い。舞台を見に来た客が、この1作でルパンを楽しめるように、初期のルパンシリーズを換骨奪胎して1作品にまとめた感じで、いかにも典型的なルパンものになっているからだ。だからある意味スピンオフ的作品で、本シリーズから独立していると思いきや「813」や「白鳥の首のエディス」(ルパンの告白)と共通の登場人物がおり、ルパンがその当時(つまりこの作品)の思い出話をしているから、一応は本シリーズに組み込まれてはいる。
これは、ルパン初心者にはこれ1作で「ルパンとは何か」がわかる作品だし、既にルパンを知っている人間には「あ、これはあの作品のこれだな」等と元ネタ探しが楽しめる作品でもある。