モーリス・ルブラン「カリオストロの復讐」
「ルパン最後の事件」は問題があり(その時に記述する)「ルパン最後の恋」は遺稿の発掘、ということで、この作品が実質上の最後のルパンということになる。
というか、この作品がルパン・シリーズの最後の作品であるべきなのだ。そうでなければ、この読後感が台無しになる。
というのも、最後に言い訳をしているが、ルパンはルパンの息子(と思しき男)を始めとする若者たちに、すっかり謎解きのお株を奪われ、いわゆる「消えゆく老兵」といった趣きなのだ。
前作「赤い数珠」からの引きずっている心理小説的深みもあれば、意外な結末にも驚く。しかし、これは(ルパン自身も含めて)「ルパンの息子」「カリオストロ伯爵夫人」に注意が行ってしまうからで、これはルブランのミスディレクションの勝利と言える。