青い瞳のダミア(1992)

アン・マキャフリイ
九星系連盟シリーズの2作目である。主人公はタイトルからするとダミアであるが、ある意味違う。彼女の恋の相手はアフラという、ヒューマン型異星人(と、いっていいと思う。緑の肌、黄色い瞳だし)である。彼のキャラクターが変わっていて、礼節厳しい星に育ち、得意技は、折り紙、幼少時の将来の夢は地球のキョートで老後を過ごすこと。マキャフリイの作品にはときおり、日本を髣髴させるグッズや名称が出てくるが、アフラの一種遠慮深く律儀で滅私奉公的献身的な(しかし芯は強い)キャラは、マキャフリイにとっての日本人のイメージかもしれない。そして、このアフラの性格が作品全体に、他のアメリカンSFには無い種類の深みを与えてる。
物語はアフラの幼少時代から始まり、1作目「銀の髪のローワン」の主人公であるローワンと出会い、彼女の弟分のような存在(秘めた恋心)になり、彼女の恋愛と結婚、出産を影で見守り、子育てにも深くかかわっていく様が、半分ぐらいまで語られる。時系列的に「銀の髪のローワン」と重なっている部分が多く、マキャフリイお得意の史記的手法だ(史記的というのは、私が勝手に言っていることだが)(元になった短編を読んでいるとはいえ、この1作目が入手できないのが、大変くやしい!)そしてローワンの3女が、アフラの恋のお相手ダミアである。
さて、これは恋愛ものだろうか?のちに彼らの子供達の話が続くとおり、これは、一連の家系の成長と恋愛を描いた大河ドラマとしての側面を持っていて、単なる恋愛ものと片付けられない。
では、これはSFだろうか?そう、今まで意識して書かなかったが、彼らは「タラント」と呼ばれる超能力者達なのだ。九星系連盟において、その能力(テレキネシスか?)を使って、宇宙船等の移送という重要な役割を担っているのである。彼らが超能力者であることで、また人間模様、恋愛模様に、格段の深みが出ているのだ。これもひとつのSFの姿である。