キング・アーサー(2004)

(ディレクターズ・カット)
というわけで、見てしまう。アーサー王伝説のルーツを描くということだが、欧米では一般常識であろうアーサー伝説を覆すのは並大抵のことでは無い事は想像がつく。やはり、当時はいまだ存在しないものが多々出てくるのはしょうがない。「騎士」という言葉と概念。「円卓」「円卓の騎士」「エクスカリバー」「ランスロットとグィネヴィアの恋(淡いが)」。また、やたら「自由」「自由」というのは違和感がある。アーサーが初期キリスト教において異端視されたペラギウス派信者というのは新鮮であるが・・・・
その主役が若干弱い。前述のように「自由」「平等」を説き、あまりにも清廉でありすぎるせいかもしれない。グィネヴィアに説かれてブリテンに残ることにするってのも違和感。ローマの兜をつけるとニコラス・ケイジにしか見えん(汗)
それに反して、いわゆる「円卓の騎士」の面々は個性的に描かれている。ローマが征服した東欧のサルマート(イラン系遊牧民)からの徴収兵という設定。ラストの決戦前には、アーサーはローマの、彼らはサルマートの軍服を着ている。(知らなかったが、サルマート兵は、実際にローマ軍としてブリテンにいたらしい、騎馬兵は彼らがルーツだとか、ならば騎士のルーツもそうではないか!)
ランスロットは二刀流(笑)普段背中に2本差してる姿はガンダムか?やはりランスロットは美形でないといけないのだろう。私的にはこっちがアーサーでもよかったが。
トリスタンは思わず「柳生新陰流の達人か?」と突っ込みたくなるような日本式殺陣を見せる。ボースは中国拳法で使うような逆手持ちの2本の短刀をつかう。ここらへんは、いかにも今風の格闘系のはやりなんだろう(?)
監督は黒沢明に対するオマージュだと語っていたが、確かに全体に「七人の侍」を思わせる部分が多い。そういえば、先ほどのトリスタンは宮口精二そのものだ。氷上でサクソン人を迎えうつシーンでは、グィネヴィアを入れてちょうど七人だし。
ピクト族(映画ではウォード)の長老マーリン(魔法使いじゃないよ)の娘という設定のグィネヴィアだが、戦士として強すぎ!でもきれい!キーラ・ナイトレイ当時18歳、おそるべし。

また、最後の決戦で圧倒的多数のサクソン軍に立ち向かう作戦は、かなり説得力があった。

と、いろいろ書いたが、本当は大変楽しめたのだ。歴史の再解釈や異説ものは大好物であるし、伝説より生々しい古代が舞台というのは新鮮だ。レビューで「私の知ってるアーサー王伝説を期待したのにそうじゃない」と文句を言っていた人がいたが、そういう人は「エクスカリバー」を見ればいいのだ。こっちもけっこう面白いし。
ちなみに、この映画評判は悪かったらしいが、どうも劇場版は、かなりのカットで切り貼り状態だったようだ。万が一これからご覧になる方には「ディレクターズ・カット」をお勧めする。